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トップ  >  学会誌  >  『ドイツ文学』158号(混合誌)特集テーマ(2018年9月15日原稿締め切り)

2018年度 『ドイツ文学』158号 特集テーマ
移動の文学――ネイションを越える文学



言語による芸術作品である文学は、近代のネイションが成立する過程において、想像の共同体としてのネイションの共通の言葉である「国語」を構築し、さらに「国民」の共同体意識とアイデンティティを構築する「国民文学」としての機能を持った。一方、文学の想像力は、常にネイションの境界線を越えて異国や異文化を表象してきたし、国や言語の境界線を越えて移動、移住する作家たちは、複数の言語や複数の文化、複数の声を内包した作品を生み出してきた。民族自決による国民国家の同一性が自明のものとして目指されるようになる以前――ドイツ語圏でいえば、ハプスブルクやプロイセンの広大な版図参照――そのような文学作品や作家の存在は、特別なものでなかったともいえるだろう。
20世紀末以降になって、ドイツ語圏の文学研究においても、「越境」、「異文化間」あるいは「トランスカルチュラル」な文学、「移民」や「マイノリティ」の文学といった概念によって境界を越える文学の可能性があらためて注目されてきた。移住や移動によって文字通り国境を越えた作家たち、母語や日常言語の枠組みを越え創作言語としてのドイツ語を選び取った作家たち、異文化との対峙をテーマとする作家たちの作品を題材に、文化の接触や混淆、異文化や他者との対峙、移動する主体のアイデンティティといったテーマ、あるいは異言語を内包した文学言語の複数性や他者性、さらには「国民国家」の脱構築の可能性について議論がなされてきた。また、「周縁」と「中心」といった概念とも深くかかわるこれらの文学は、ポストコロニアル批評、ジェンダー批評にみられる文化政治的視点と、日常言語を異化する実験的な詩的言語の多声性や他者性といった審美学的な詩学の側面とが交差する場であるともいえる。文化研究の一分野としての文学研究が、このような問題にあらたに取り組むようになった背景には、20世紀末からの(冷戦構造の終焉、欧州連合の拡大、そして「文明の衝突」の標榜など)地政学的、文化政治的要因と、それに応答しようとする文化研究の言説の変遷があるといえよう。
いうまでもなく、このような文学の多文化性、多言語性は、昨今始まったものではなく、ヨーロッパが世界を探索し版図を拡大した時代、さらには他の世界を支配した時代から連綿と続いてきた現象であり、その考察の対象は、時間的にも地理的にも大きな広がりを持ち得るだろう。啓蒙時代の旅行文学などに見られる異文化表象や「文化」概念をめぐる議論。多言語、多文化を内包していた帝国の文化言語としてのドイツ語による文学。20世紀初頭の植民地支配の経験を扱った文学。また、国民国家のイデオロギーがナチズムという極端な形に発展したドイツにおいて、他者の烙印を押され迫害されたユダヤ人やシンティ・ロマの人たちの/についての文学、あるいは、亡命した異国の地で書かれたドイツ語の文学。そして、移民受入国家となってあらたな多文化状況を経験している現代における、移民やマイノリティによる文学などである。
文学は、政治的境界線を強化する役割も、逆に、境界線を越えナショナルなものを揺るがす可能性も持っている。また、詩的言語は、そもそも日常的な言語使用の枠組み、すなわち言語の境界線を越え、そして別様の現実認識を提示しうるともいえる。ボーダーレスが標榜された時代を経て、ネイションの境界をめぐる議論が再燃している現在、このような文学をどのように読むかを問うことには今日的な意義もあるだろう。本特集では、「移動」、「移民」、「越境」、「横断性」、「インター/トランス・カルチュラリティ」などに着目しつつ文学作品を論じることの意味について、文学論的な視点、また、文化政治的、文学社会学的な視点から、改めて問いなおすことを目指している。

ドイツ文学・文化全般にわたる学術的論考をお待ちします。以下のようなテーマも可能です。

  • マイノリティ(エスニシティ、ジェンダー、言語的マイノリティなど)による/についての文学
  • 旅行文学、奇想文学(他者表象、異文化表象、移動する主体のアイデンティティなど)
  • ドイツ語圏における多文化状況、多言語状況(文学・映画・演劇など)
  • ドイツ語圏におけるポストコロニアリズム文学理論への再考




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