<東京演劇アンサンブル>『避暑に訪れた人びと』公演のお知らせ
東京演劇アンサンブル『避暑に訪れた人びと』公演のお知らせ

„Sommergäste nach Gorki“ ― Fassung der Berliner Schaubühne von Peter Stein und Botho Strauß
Die Aufführung des Tokyo Engeki Ensembles am Brechtraum Tokyo


 1954年創設の東京演劇アンサンブルは、チェーホフとブレヒトに触発されて誕生した劇団である。チェーホフ生誕150年にあたる今年、かつて西ベルリンの劇団シャウビューネが1974年にチェーホフ劇として上演したゴーリキーの戯曲『避暑に訪れた人びと』(1904)に取り組む。
 原作は、1870年代の「ナロードニキ運動」の洗礼を受けて育った、ロシア革命前夜のインテリ連中を主題とする。自分たちの教養生活は、人民の血と汗の犠牲によって享受されたものだから、その代償として彼らのために戦い、やがては社会的正義を実現しなければならない。しかし政治の季節が終わり、収入の安定した中年期にさしかかると、彼らは日々を無為に過ごす大人たちになっていた……。
 1970年代初頭、西ベルリン・ハレ河岸劇場に集った劇団シャウビューネの団員たちは、当時ブレーンであった劇作家ボートー・シュトラウスを中心に、ロシア革命前夜の小市民たちの葛藤を1968年パリ五月革命以降の「ドラマなき時代」と重ね合わせながら、自分たちの存在意義を空しく求めるインテリ連中の人間模様を、新しい演劇的営為を求めて格闘する彼ら自身の物語として上演し、大成功を収める。
 チェーホフを心から尊敬する演出家ペーター・シュタインは、初めから彼の四大戯曲を扱うことは不遜であると感じて、若きゴーリキーの習作をチェーホフ劇として演出しようと考えた。さらにドラマトゥルクを担当したシュトラウスは、習作の色合いが濃かった同作品を原作者の作劇法を理解したうえで、映画の表現技法を持ち込むことにより、全4幕の戯曲形式を大胆に78の小場面へと改作し、神経症気味な小市民たちの心象風景を、同時代の群像として新たに甦らせることに成功している。
 そして2010年、東京演劇アンサンブルは再びアンサンブル自身の物語として、このドイツ語改作版をベースに舞台化を試みる。インテリに何ができるか、という問いかけは、メディアの多様化とともに演劇離れが進むいま、演劇的営為を通じて、あるいはこの劇団にいま何ができるのか、という問いにラジカルに置き換えられる。『避暑に訪れた人びと』は俳優のための芝居であり、女性のための物語でもある。アンサンブルとしてこの戯曲と格闘することは、常にアクチュアルな試みとなるだろう。モスクワ芸術座から、ベルリン・シャウビューネを経て、東京演劇アンサンブルへ。演劇表現と集団的営為に関心のある方には、ぜひこの公演を見ていただきたい。

 『避暑に訪れた人びと――ベルリン・シャウビューネ改作版』
 原作:マクシム・ゴーリキー
 改作:ペーター・シュタイン ボートー・シュトラウス
 翻訳・ドラマトゥルク:大塚直
 演出:入江洋佑

  日時: 2010年 9月11日(土)~20日(月) 
  開演: 14:00~  9月12日(日)、16日(木)、18日(土)、19日(日)、20日(月)
       19:00~  9月11日(土)、13日(月)、14日(火)、15日(水)、17日(金)

  会場: 「ブレヒトの芝居小屋」 〒177-0051 東京都練馬区関町北4-35-17
  料金: 当日5000円  前売り(一般)4500円  前売り(学生)3500円
*割引のご案内: 日本独文学会会員の方には、前売り料金よりさらに1000円割引いたします。
  ただし、15日(水)のハーフチケットデーは、一律2500円です。

 東京演劇アンサンブル
 制作:太田昭・小森明子
 〒177-0051 東京都練馬区関町北4-35-17
 Tel.03-3920-5232/Fax.03-3920-4433/E-mail:ticket〔at-mark〕tee.co.jp/URL:http://www.tee.co.jp

文責:大塚直(翻訳・ドラマトゥルク)