『ドイツ文学』142号告知文
機関誌『ドイツ文学』では2011年春秋刊行予定の142号(国内刊行誌・和欧混合)の特集テーマとして「否定性の諸相」„Konzepte des Negativen“ を掲げてすでに原稿募集をしています。欧文の告知文はすでに機関誌140号の編集後記に掲示しておりますが、今回日本語によるものとともにホームページ上で掲示いたします。ご参照のうえ、ふるってご応募ください。応募なさる方は、機関誌末尾の「応募要項」に基づき、2010年9月15日までに学会事務局まで原稿をお送りください。執筆言語はドイツ語または日本語です。特集原稿の執筆をお考えの方は、編集作業の都合上、あらかじめ事務局までご連絡いただければ幸いです。

特集テーマ: Konzepte des Negativen(否定的なものの諸相)

モデルネの文学は、20世紀に入ると、自らを否定的なものとして規定する傾向をあからさまなまでに強めていきます。たとえば、描写ないしは言語それ自体の不可能性を問題にするとき、あるいは、これに関連して、喪失や不在といったものが表現されるときに、この傾向が前景化します。しかし、すでに初期ロマン派において、新しい形式としての断片というものが文学に取り入れられたとき、あるいは–––歴史の破壊的力だけではなく、それと同時に建築物が破壊という原初的な諸力に堪えてきたという事況をも指し示すために–––芸術作品において廃墟が表現へともたらされるようになったとき、否定的形象というものが焦点化されていました。
 否定的な思考様式あるテクスト構造からある詩学が生成する過程を辿った論文、あるいはそのような詩学を構想した論文、否定的なテクスト形象の持つ力学を明らかにしたもの、(たとえば、消滅する時間についての意識としての)否定的時間性を解明する論文をお待ちしております。これに加えて、(たとえば、ディストピアのような)文学的ジャンルにおける昨今の動向を確認する論文、あるいは文学作品における否定の形象、差異ないしは不協和の形象、そして否認の形象を探究した論文、それを手がかりにして文学ないしはモデルの芸術全般の諸条件を考察へと展開していく論文なども歓迎いたします。