<東京演劇集団風>創立20周年記念企画

東京演劇集団風創立20周年記念企画

期 間 :2008年7月28日(月)~9月7日(日)      
作 品:【ベルトルト・ブレヒト作品3本連続公演】
     『乞食 あるいは 死んだ犬』7月28日(月)〜8月3日(日)
     『肝っ玉おっ母とその子供たち』8月8日(金)〜10日(日)
     「マハゴニー市の興亡」8月22日(金)〜27日(水)
      ◆◆◆
     『アポカリプティカ-20世紀の黙示録』9月4日(木)〜7日(日)

入場料: 学生割引3300円 前売り3800円 当日4000円
     (団体でご覧になられる時はご連絡ください。また2作品以上ご覧になりたい方は、
     半券をお持ちいただければ3000円となります。その際はご予約ください)
会 場: レパートリーシアターKAZE 
     (JR「東中野駅」徒歩6分、地下鉄「中野坂上」駅A1出口徒歩7分

東京演劇集団風/レパートリーシアターKAZE
〒164-0003 東京都中野区東中野1-2-4  TEL.03-3363-3261 FAX.03-3363-3265
E-Mail :info@kaze-net.org URL http://www.kaze-net.org/

2008年7月~9月、東京演劇集団 風は劇団創立20周年を記念して、ベルトルト・ブレヒト作『乞食あるいは死んだ犬』『肝っ玉おっ母とその子供たち』『マハゴニー市の興亡』の3作品、並びに、スロヴァキア出身でドイツを拠点に活躍するマイム・アクター、ミラン・スラデクによる『アポカリプティカ-20世紀の黙示録』を連続公演します。

東京演劇集団風は、1987年秋に創立されました。その名には”風のように自由にモノをつくる”という思いが込められています。1988年ユージン・オニール作『アナ・クリスティ』で旗揚げ公演。同年には『ハムレット』(W・シェイクスピア作、風脚色)で初の地域公演を実施。以後『星の王子さま』(サン-テグジュペリ作)『Touch〜孤独から愛へ』(ライル・ケスラー作)『ヘレン・ケラー〜ひびき合うものたち』(松兼功作)が全国公演を展開し、現在もKAZEの代表的なレパートリーとなっています。
また『三人姉妹』『かもめ』『桜の園』(チェーホフ作)、『ガラスの動物園』(テネシー・ウイリアムズ作)などを上演し、近代劇を捉え直す試みを通して、現代社会のあり方、人間の存在を問い続けてきました。

1999年、東京・東中野に創造活動の拠点として、レパートリーシアターKAZEを開設。2003年には「愛着を持って繰り返し上演することにより、観客と共に質を創り上げていく」レパートリーシステムをスタート。『肝っ玉おっ母とその子供たち』はその第1弾として上演し、レパートリーシステムを確立させた作品です。また同年、国際演劇祭〈ビエンナーレKAZE演劇祭〉を立ち上げることで、現代における演劇のあり方を模索し、実践する海外の演劇人との交流も深め、共同製作も行ってきました。

いま、創立20周年を迎え第2の創生期に立つKAZEが、20世紀を闘い生きた詩人・ブレヒト作品と、”黙示録”の連続上演によって、20世紀的課題を現代という視点から捉え直します。


『乞食 あるいは 死んだ犬』について
7月28日(月)~8月3日(日)
作:ベルトルト・ブレヒト 訳:岩淵達治
演出:浅野佳成 音楽:八幡茂 舞台美術:ズザンナ・ピョントコフスカ 照明:フランソワ・シャファン
出演 乞食:オリビエ・コント 皇帝:イワナ・クラチュネスク 兵士たち:田中悟 佐藤勇太


1919年、ブレヒト21歳の時に書いた作品。
 戦勝の祝賀会に赴こうとした皇帝が、乞食に話しかける。自分に対する尊敬の念を求めたのである。皇帝の勝利を祝う鐘の音が、死んだ愛犬の弔いの音にしか聞こえない乞食。乞食は「敵を殺しただけで勝ったわけではない、白痴が白痴を殺しただけだ」と戦争の愚かさ、その無価値さについて話す。二人の対話は全くかみ合わない。例のないシュールレアリズムな会話の中で、二人の関係は逆転していく。

浅野佳成(レパートリーシアターKAZE芸術監督)の演出する、KAZEのブレヒト最新作。
マテイ・ヴィスニユック作『チェーホフ・マシン』『年老いたクラウン』で3度の〈ビエンナーレKAZE演劇祭〉に参加し、観客を魅了したフランスの俳優オリビエ・コントと、彼が最も信頼するルーマニアの国民的女優イワナ・クラチュネスクが乞食と皇帝で出演する。
舞台美術・衣裳に、『三人姉妹』『マハゴニー市の興亡』などを手掛けてきたポーランド在住の劇団員、ズザンナ・ピョントコフスカ。照明プランにフランス・ブリ二ー劇場の芸術監督フランソワ・シャファン(オリビエ・コントの演じるモノドラマ『年老いたクラウン』の照明で来日。『フランクフルトに恋人がいるサックス奏者が語るパンダの物語』の海外ツアーでも照明プランを手掛けている。作家、演出家、俳優としても活躍)が加わり、世界でもほとんど上演例のないブレヒト初期の作品に取り組み、その原点に迫ります。
(フランス語上演、字幕付き)



『肝っ玉おっ母とその子供たち』
8月8日(金)〜10日(日)
作:ベルトルト・ブレヒト 訳:岩淵達治
上演台本・演出:浅野佳成 音楽:八幡茂 舞台美術:アンジェイ・ピョントコフスキ
出演:肝っ玉おっ母:辻由美子 カトリン:稲葉礼恵/白根有子 料理人:柳瀬太一 イヴェット:柴崎美納/仲村三千代
   従軍牧師:田中悟 アイリフ:佐野準/鈴木亮平 スイスチーズ:栗山友彦/佐藤勇太
   徴兵係・若い指揮官:白石圭司 農婦:清水菜穂子 大佐・農夫:高橋征也


 1939年(ブレヒト41歳)、第二次世界大戦下の亡命中に描かれた作品。戦場で生きる庶民の姿を描いた20世紀の名作として今も世界各地で上演されている。
 舞台は17世紀、ヨーロッパ全土を巻き込んだ宗教戦争(旧教:カソリックと新教:プロテスタント)は30年も続いていた。通称を「肝っ玉おっ母」と呼ばれる従軍の女酒保商人アンナ・フィアリングは3人の子供たちと戦争を市場にして生きている。肝っ玉おっ母は戦争によって3人の子供を失うが、生きるためにまた軍隊を追って、ひとり幌馬車を引っぱっていく。

1999年レパートリーシアターKAZEのオープニング企画として上演。「演目を使い捨てることなく、愛着を持って、再度、再々度、積み重ねることで、観客と共にその作品の質を育てていく」という、レパートリーシステムの実践を確立してきた作品。その成果として2004年、肝っ玉おっ母役の辻由美子が第11回読売演劇大賞 優秀賞女優賞を受賞、また第11回湯浅芳子賞(戯曲上演部門)、第4回倉林誠一郎記念賞 団体賞と続けて3つの賞を受賞した。2006年より劇のエンディングにブレヒトの詩を加え、「あとから生まれて来る人たちに」というサブタイトルで、全国各地の若い観客を対象に上演してきた。観客たちのまなざしは戦争から人々へ、人から家族、家庭の問題へと移行し、そこから戦争・平和の問題へと循環し、劇団には多くの声が寄せられている。レパートリーシアターKAZEで育てられてきた作品が、全国の観客のまなざしに鍛えられ、20周年記念に凱旋公演する。



『マハゴニー市の興亡』
8月22日(金)〜27日(水)
作:ベルトルト・ブレヒト 訳:岩淵達治 
演出:浅野佳成 音楽:八幡茂 舞台美術:ズザンナ・ピョントコフスカ 照明:塚本悟 音響:実吉英一
出演:パウル・アッカーマン:柳瀬太一 ベグビック:保角淳子 三位一体のモーゼ:酒井宗親 社長のヴィリー:田中悟
   ジェニー:柴崎美納/渋谷愛 ヤーコプ・シュミット:栗山友彦 ヨーゼフ・レットナー:緒方一則 ハインリヒ・メルク:中村滋
   口上役:田中賢一 トビー・ヒギンズ:佐野準 マハゴニーの男たち:坂牧明/佐野準/佐藤勇太/白石圭司/田中賢一
   マハゴニーの女たち:木村奈津子/工藤順子/稲葉礼恵/清水菜穂子 仲村三千代/白根有子/千田沙都


 1928年~29年(ブレヒト31歳、)、世界大恐慌を前に、作曲家クルト・ヴァイルとの共同でこのオペラ台本を書き上げ、叙事的演劇の模索を開始した。
 指名手配中の凶悪犯ベグビック、モーゼ、ヴィリーの3人が砂漠で逃走中に、歓楽都市「マハゴニー」を作り、金儲けすることを思いつく。たちまちマハゴニーは話題になり、金儲けしようと娼婦たちが集まってきた。そしてアラスカからパウル、ヤーコプ、ヨーゼフ、ハインリヒ、木こりの4人組もやってくる―。
 しかし依然として制限と統制の多い街で、彼らは幸福でないと感じる。破壊的なハリケーンを奇跡的に回避した夜を境に、パウルは一切の制限の廃止を提唱する。“金さえあればやりたい放題”。飽食、セックス、ギャンブル、欲望に埋め尽くされた街はフル回転する。

資本主義社会への痛烈な戯画化であるこのオペラ台本を浅野佳成上演台本、八幡茂作曲のオリジナル音楽劇として2007年に2度の上演を行い、現在の大量消費社会を浮かび上がらせようと試みた。戦争を相手に商売し、幌車を引いて生きる肝っ玉おっ母とそこに生きる人々を描いた『肝っ玉おっ母とその子供たち』。欲望の街でやりたい放題をモットーにした後に、「おれたちはだれも助けることはできない」と叫ぶ『マハゴニー市の興亡』。人が幸福に生きること、その知恵と愚かさ、小さなものを押しつぶす社会に目を据えた、KAZEのブレヒト2作品の連続上演です。


『アポカリプティカ-20世紀の黙示録』
9月4日(木)~7日(日) 
作:ミルコ・ケレメン/フェルナンド・アラバール/エドモンド・キーゼルバッハ/ミラン・スラデク
演出:ミラン・スラデク 舞台美術:アントニン・マルク
出演:ミラン・スラデク/イシドロ・フェルナンデス/グラシアス・デバラジュ


 2003年、第1回ビエンナーレKAZE演劇祭で上演。
 マイムアーティストとして演出も手掛けるミラン・スラデクは、アルフレッド・ジャリ作『ユビュ王』、メリメ作『カルメン』などの大作品も多く演出し、また自ら演じるが、この小作品はライフワークとして殊更大切にしている。 
 金の、国境の、あるいは権力のための戦争、そのためには神の名を悪用したり、異なる考えの人々が悪として追放される。技術による転変地異、人間が自然を異変へとしいていく災い。アポカリプティカ―黙示録という、古い昔からある壮大なテーマをあくまで人間的に把握し、この時代を生きる私たちにとって、見過ごせない身近なテーマとして提示します。

1938年にチェコスロヴァキア共和国に生まれ、世界的マイムアーティストと評価されつつも、1968年プラハの春にスェーデンに亡命、1970年にドイツに移住。1989年社会主義の崩壊とともにスロヴァキアに戻り、現在はドイツ・スロヴァキアの両国に拠点を持ち独自の舞台を提示し続けている。
ブレヒト作品にも造詣が深く、等身大の人形を使った『三文オペラ』のマイム劇作品なども手掛けている。2005年にはKAZEの『三文オペラ』を演出(ビエンナーレKAZE演劇祭)。
今回再来日する『アポカリプティカ』では、浅野佳成の提案により副題を「20世紀の黙示録」と題して上演。KAZEの20周年記念公演の最後を飾る。