【早稲田大学COE演劇研究センター】 研究会+シンポジウム「演劇・国家・政治 現代演劇の戦略」のお知らせ【Waseda-Universität】 Einladung zum Symposium "Theater, Staat und Politik - Strategien
研究会+シンポジウムのお知らせ



「演劇・国家・政治 現代演劇の戦略」





パリ第10大学演劇映画表象研究センターと早稲田大学演劇博物館との間で学術交流協定が調印されるのを記念して、パリ第10大学より、研究の質の高さで広く知られる2名の教授を招聘し、現代演劇の表象=上演システムにおける「政治(性)」の問題を再考する研究会およびシンポジウムを開催します。



前半の研究会では、芸術文化を舞台として、国家と市場の間で展開する矛盾と葛藤、さらにその劇中に巻き込まれる芸術家の自由度の問題を論じます。シンポジウムにおいては日本の現代演劇を代表する演出家および批評家を交えて、日本とフランスの演劇人および研究者の相互理解と交流を図ります。後半においては、さらにドイツを代表する論客のハンス=ティース・レーマンおよびエレン・ヴァロプルの参加を得て、フランスとドイツの演劇を中心に、国民国家を生み出した「古い」ヨーロッパの20世紀演劇における、「国際」概念を歴史的に再検討するとともに、これからの新しい演劇共同体の可能性を論じます。以下に各日の議論の概要を掲げますが、若干の変更があり得ることをご了承下さい。



なお、すべての催しへの参加は無料ですが、会場準備のため、事前の申込みをお願いいたしております。fujiis@waseda.jp まで、お名前、参加人数、当日連絡先を記したメールをお送り下さい。特に10月3、4日の会場は、現在のところ未確定のため、折り返し、ご案内のメールをお送りします。大勢の方々の参加を心よりお待ちしております。




主催 

早稲田大学21世紀COE演劇研究センター

早稲田大学演劇博物館

早稲田大学第一文学部演劇映像専修

日仏演劇協会

協力 

東京大学表象文化論研究室

パリ第10大学演劇映画表象研究センター





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プログラム概要

早稲田大学キャンパスマップ


2005年9月29日(木)18:00-21:00 

「演劇・国家・市場 文化公共政策を再考する」(フランス語、通訳なし)

エマニュエル・ヴァロン

早稲田大学演劇博物館レクチャールーム



フランスにおいて文化省が発足して40年以上が過ぎ、公共政策としての文化政策の重要性と必要性は、フランスのみならず、日本においても理解されるようになってきたといえよう。だが、「市場」が支配する領域がさらに拡大を続け、「公共性」の定義も問い直されている今日、国あるいは地方自治体が担うべき役割にはどのような変化が現れようとしているのか考える。



2005年9月30日(金)18:00-21:00 

「演劇・国家・市場 « 間隙 »の詩学/政治学」

(フランス語、原則として通訳なしだが、ドイツ語での説明も若干加えてもらう予定)

ジャン・ジュルドゥイユ

コメント:エマニュエル・ヴァロン

早稲田大学演劇博物館レクチャールーム



演劇が国家との関係において構想されえた60年代から、ベルリンの壁、共産主義ブロックの崩壊を経て、何よりもまず市場との関係において構想されるようになった現在、芸術家のおかれた状況も激変した。演劇人、演出家、翻訳者、大学教師、詩人、ドラマトゥルグとして、一つの形容詞には決して収まらない活動を繰り広げてきたジュルドゥイユが、自作品の貴重な記録映像を交えながら、自らの芸術家としての軌跡を語り、演劇制度の間隙を縫うようになされる「遊び=ゲーム」の可能性、その詩性と政治性を再考する。



2005年10月1日(土)14:00-17:00 

シンポジウム「演劇・国家・市場 公共演劇の再創造 創造の現場からの証言」(日本語通訳つき)

パネリスト:エマニュエル・ヴァロン、ジャン・ジュルドゥイユ、宮沢章夫、西堂行人

早稲田大学文学部36号館681教室



フランスにおけるアンテルミタンが巻き起こした危機、日本における指定管理者制度の導入に伴う議論が示すように、国家ないし地方自治体などの公権力が、文化の全面的な後見人・保証人となる制度はその限界を見せ、今日、市場が支配する領域がますます拡大してきている。演劇人および劇場が手にした自由度もまた、変容しつつある。文化が、民主主義の要請よりもマーケットの要請に左右されるようになる時代に、表現者はいかなる距離を、自らの遊び、表現のために確保することができるのだろうか。演出、劇作、批評、政策、さまざまな側面から演劇および演劇教育に関わる4人が議論する。



2005年10月3日(月)18:00-21:00 

「現代演劇における«国際性»の系譜学」(日本語通訳つき)

エマニュエル・ヴァロン、ジャン・ジュルドゥイユ

コメント:ハンス=ティース・レーマン 、エレン・ヴァロプル

早稲田大学文学部第7会議室(できれば14号館の共通教室を使用。9月中旬以降に決定)



現代芸術が他者(性)を志向することは今日、もはや自明のことにも思われる。特に20世紀後半では、国民国家の境界線は、乗り越えられるべき存在として位置づけられてきたし、現在でも国際コラボレーションは、とりわけ行政にとっての需要は大きい。イエジィ・グロトフスキ、ピーター・ブルック、アリアーヌ・ムヌーシュキン、エウジェニオ・バルバといった、戦後現代演劇の創始者たちにとって「国際性」が持つ意味の差異を考えながら、現代演劇に取り憑いて離れない「文化的他者」の問題を再検討する。



2005年10月4日(火)18:00-21:00 

「ヨーロッパ演劇の現在と未来」(日本語通訳つき)

ハンス=ティース・レーマン 、エレン・ヴァロプル

コメント:エマニュエル・ヴァロン、ジャン・ジュルドゥイユ

早稲田大学文学部第7会議室(できれば14号館の共通教室を使用。9月中旬以降に決定)



紆余曲折を経ながら統合が進むヨーロッパにおいて、国民演劇としての各国演劇の総体ではないような、ヨーロッパ演劇を見出すことはできないだろうか。現代演劇において、国家や文化を横断するような、「ポストドラマ的」な特徴を見出すことは可能ではないだろうか。伝統、テクスト、身体、空間をキーワードに、境界の意味を改めて問い、ヨーロッパの演劇に見られる新しい政治性と社会性を考察する。


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パリ第10大学および招聘講師の紹介



パリ第10大学 パリ郊外ナンテール市に立地する、第二次世界大戦後に作られた比較的新しい総合大学で、1968年五月革命の端緒を開いた、学生の抗議運動の舞台となったことでも知られる。パリ首都圏において、演劇研究の拠点となっている3つの大学の一つであり、フランスおよびヨーロッパの演劇研究をリードする有数の拠点であるとともに、近年は演出家、ドラマトゥルグ、制作者など実践者の養成も開始し、多様な成果を上げている。



ジャン・ジュルドゥイユ パリ第10大学舞台芸術科教授。フランスにおけるベルトルト・ブレヒト、さらにハイナー・ミュラーをはじめとするドイツ現代演劇の翻訳者・紹介者として、演出家ジャン=ピエール・ヴァンサンのドラマトゥルグとして、さらに自分自身、演出家として、きわめて多才かつ多彩な表情を持つ演劇研究者である。



エマニュエル・ヴァロン パリ第10大学舞台芸術科教授。政治学の博士号を持ち、演劇学と政治学の2つの学科で教鞭を執る、これまた多様な顔を持つ演劇研究者である。演劇を中心とする文化政策の専門家として、フランス文化省における政策の立案や実施にも関わるほか、より広く演劇と政治(性)の関係を論じる。



ハンス=ティース・レーマン フランクフルト大学演劇・映画・メディア学科教授。フランス語や英語も完璧に操り、ヨーロッパの各国演劇に広く通じており、ドイツのみならずヨーロッパを代表する演劇研究者である。主著『ポストドラマ演劇』(谷川道子ほか訳、同学社)。

 

エレン・ヴァロプル 演劇評論家・翻訳家。アテネで法律を学んだ後、パリ第3大学にて演劇学、記号学、メディア論を学ぶ。ギリシャやドイツの大学で演劇を教えた経験を持ち、ゲーテ、ブレヒト、ベンヤミン、そしてとりわけハイナー・ミュラーをギリシャに紹介した功績によって知られる。