<阪神ドイツ文学会>第68回総会・第225回研究発表会のご案内

阪神ドイツ文学会
第68回総会・第225回研究発表会のご案内



 表記の総会・研究発表会を大阪大学文学研究科との共催により、下記のとおり開催いたしますので、ご案内申し上げます。阪神ドイツ文学会会員以外の方のご参加も歓迎いたします。参加費は無料です。(非会員は総会での審議・議決にはご参加いただけません。)


日時: 2018年4月7日(土)13時30分より
場所: 大阪大学 文法経講義棟 4階 文41番教室
住所: 〒560-8532 大阪府豊中市待兼山町1-5
電話番号: 06-6850-6111(代)
阪急電車宝塚線 石橋駅(急行停車)下車 東へ徒歩約15分。
大阪モノレール 柴原駅下車 徒歩約10分
(詳しくは http://www.let.osaka-u.ac.jp/ja/access をご参照ください。)


1.総会

1) 幹事諸報告:庶務、会計、編集、企画、渉外、支部選出理事
2) 審議事項:2018年度予算について
3) 役員選挙:会長選挙・幹事選挙
今回の総会では役員選挙が行われます。新しい「会員名簿」が被選挙人の原簿となります。同封の「会員名簿」を当日ご持参ください。
現役員のうち以下の方々は、「役員選挙内規」第7条の規程により再選禁止となります。
会長:工藤康弘
幹事:小川 敦 柏木貴久子 黒沢宏和 髙井絹子 津田保夫 宮下博幸

2.研究発表会

発表1:
佐分利啓和(関西学院大学修士課程)
題目: 「所有の与格」と「所有の対格」交替現象の再考
司会: 宮下博幸(関西学院大学)
発表要旨:

 ドイツ語における与格には文に必須の要素である「目的語の与格」と任意の「自由与格」がある。自由与格のうち (1a) のような与格は一般的に「所有の与格」と言われるが、この与格は (1b) のように「所有の対格」(関口 1966、在間 2017: 127f.)に置き換え可能な場合がある。
(1) a. Er schlug mir ins Gesicht.
b. Er schlug mich ins Gesicht.
Wegener (1985) は (1) のような例を所有の与格と対格の交替現象として捉え、「意図性」と「強度」という2つのメルクマールを用い、非意図性を表す副詞 (unabsichtlich) や無生物主語が共起する場合には対格は出にくく (2)、身体損傷を表す「強度」の高い動詞には対格が、身体接触のみを表す「強度」の低い動詞には与格が用いられるとしている (3)。
(2) a. Er hat mir / ?mich unabsichtlich ins Gesicht geschlagen.
b. Der Basenstiel schlug mir / *mich ins Gesicht.
(3) a. Er verletzt sie am Arm.
b. Er streicht ihr übers Haar / *sie übers Haar.
清野 (1991) もWegener (1985) の考察を部分的に導入しており、Schoenfeld/Diewald (2014) においても、両構文は同一の事象を表現する並行的な交替現象として語用論視点での比較がなされている。これに対し本発表では所有の与格・対格の交替は副次的現象に過ぎず、それぞれは本来方向規定ならびに対格目的語を伴う構文から拡張したものと考えることで、Wegener (1985) のメルクマールも不要になることを示したい。さらにこの立場から、なぜ動詞によって所有の与格・対格のどちらかが出現する傾向が見られるのかという点も説明したい。

発表2:
山本鉄平(大阪大学大学院博士後期課程)
題目: 液状化する自我
-ムージル『特性のない男』における群衆-
司会: 吉田耕太郎(大阪大学)
発表要旨:

 19世紀の群衆心理学から20世紀のフロイトやブロッホに至るまで群衆は、理性的で自律した近代的自我、そして社会秩序を脅かす危険な対象として認識されてきた。そのため多くの論者は群衆を、理性を失った「犯罪者」や「狂人」に喩え、社会的に管理する必要性を唱えている。しかしながら、ムージルが『特性のない男』で表現する群衆からは、上記の古典的な群衆観とは異なる視座を読み取ることができる。すなわち彼は、個々人の近代的自我が液状化する群衆のなかに、あらゆる定義づけを免れ変化し続ける人間の「前状態」を看取しているのである。とはいえ、ムージルの記述は断片的なものにとどまるため、彼の群衆論の射程を正確に捉えることは容易ではない。また先行研究もMichael Gamperのものを除きあまり見受けられない。そこで本発表では議論の手がかりとして、研究の蓄積があり、かつムージルにおいて群衆と並行的に理解される「犯罪者」と「狂人」(モースブルガーと精神医学との関係)にまず注目する。その結果として、ムージルの主要な関心である「自我の解体」が、群衆という観点からもアプローチされていることを明らかにする。

3.懇親会

 総会・研究発表会が開かれる同じキャンパス内の豊中福利会館3階生協食堂で開催します。会費は4,000円(学生2,000円)です。