<阪神ドイツ文学会>第219回研究発表会のご案内

阪神ドイツ文学会第219回研究発表会のご案内


以下の研究発表会を開催いたしますので、ご案内申し上げます。
阪神ドイツ文学会会員以外の方のご参加も歓迎致します。参加費は無料です。

日時: 2015年12月13日(日)13時30分より
場所: 近畿大学 東大阪キャンパス38号館S-204号室(2階・多目的利用室)

所在地:〒577-8502 大阪府東大阪市小若江3-4-1電話番号:(06) 6721-2332(代表)
*近鉄大阪線「長瀬駅」下車、1番出口より東方向へ、徒歩約15分(会場まで)
近鉄奈良線「八戸ノ里駅」下車、1番出口より南方向へ、バスと徒歩約10分、徒歩約20分(会場まで)
(詳しくは以下のサイトをご覧ください。なお、目下キャンパス内は工事中につき、通行禁止区域がありますのでご注意ください)
http://www.kindai.ac.jp/about-kindai/campus-guide/access.html

(急な変更や中止の際は、以下の公式ブログでお知らせします。)
阪神ドイツ文学会公式ブログ:http://hsgm.exblog.jp/


発表1:井口真一(関西学院大学博士後期課程)・宮下博幸(関西学院大学)
題目:ドイツ語形容詞 ähnlichの文法化 ― 形容詞から前置詞へ ―
司会:山下仁(大阪大学)
発表要旨:

対象間の類似性を描写するドイツ語の形容詞 ähnlich は、多くの文法書で与格支配の形容詞に分類されている (Duden 1998, Engel 2009, Helbig/Buscha 2013)。一方で、一部の辞書は特定の用例 (z.B. Ähnlich einer Stilistik/ Einer Stilistik ähnlich gibt dieses Buch gute sprachliche Ratschläge.) を前置詞的に使用されたものとみなしており (Duden 1999, Langenscheidt 2010)、また ähnlich が前置詞として再解釈可能であることを指摘する研究も存在する (Meola 2000)。しかし、従来の研究はいずれも ähnlich が前置詞的に使用されうることを記述するにとどまっており、ähnlich がどの程度通常の前置詞と共通性があるのか、さらにどのようなプロセスを経て前置詞的な用法が生じたのかについては十分に議論されていない。本発表ではこの点に着目し、まず、コーパスデータの共時的な分析に基づき、ähnlich の前置詞としての資格について調査し、ähnlich がすでに前置詞と見なしうることを示したい。また ähnlich が前置詞として再解釈されるに至る文法化のプロセスを論じる。さらに、前置詞へと文法化する形容詞にはどのような特徴が見られるのかについても触れてみたい。

発表2:藤原美沙(大谷大学)
題目:シュティフターの『電気石』における少女の障がいについて
司会:長谷川健一(大阪市立大学)
発表要旨:

アーダルベルト・シュティフター(Adalbert Stifter, 1805-1868)の『電気石』(Turmalin, 1853)は、これまで、「子ども」を主題とした短編群を一つにまとめた『石さまざま』(Bunte Steine)のなかでも、異色なものとみなされてきた。(Martini 1962, Requadt 1968)たしかに、父親に地下室に閉じ込められた少女がその後解放され、自分で生計を立てる術を得てもなお、「継承されない」生(七字 1985)でありつづける点は、本作品に暗い影を投げかけている。しかし、少女が語る地下室での父親との生活は、静謐で神聖さすら感じさせるものである。本発表では、この疑似的楽園ともいえる描写を可能としている要因の一つとして、少女の身体的・知的障がいに焦点をあて、それらが父親の罪と狂気を理解しえないものへと昇華しながら、一種の救済をもたらしていることを明らかにする。

発表3:熊谷哲哉(近畿大学)
題目:夢遊ダンサーは何を見せたか ― シュレンク=ノッツィングと世紀転換期文学における二重人格者の表象 ―
司会:河野英二(近畿大学)
発表要旨:

19世紀半ばから20世紀初頭にかけて、ドイツをはじめアメリカ、ヨーロッパ、さらに日本においても心霊主義(Spiritismus)が流行した。ミュンヘンでは、哲学者のカール・デュ・プレル、医師で催眠研究者のシュレンク=ノッツィングらが、心霊主義サークルを形成し、交霊術や自動筆記、催眠術といった心霊現象の研究に取り組んでいた。シュレンク=ノッツィング(1862~1929)は、夢遊状態の人間が示す能力や人格の変容に着目し、1904年には、催眠状態の女性の舞踊をミュンヘンで上演し、話題となった。同時代にはパウル・リンダウ『別の男』(1885)のような、別の人格の現れ、すなわち二重人格をテーマとした作品がいくつかある。本発表では、シュレンク=ノッツィングの著作『夢遊ダンサー』(1904)と同時代の二重人格を扱った文学作品を通じて、人々が二重人格という現象に何を見出そうとしていたのかを探る。