<劇団俳優座>フル・サークル〜ベルリン1945〜
戦後70周年を迎えるこの年に「西部戦線異状無し」「凱旋門」など生涯一貫して反戦を訴え続けたレマルクの唯一の戯曲を20年ぶりに再演します。
陥落寸前のベルリンを舞台にしたこの芝居は個としての人間の自由を否定するあらゆる体制と愚劣な戦争への異議申し立てという主題を、極限状況の中で芽生える悲痛なラヴ・ストーリーにからめて提示した、メッセージ性のみならず娯楽性にも富んだいわば硬質なメロドラマです。しかし、このドラマの根底にあるのは戦後にネオ・ナチの動きを懸念したレマルクが、「(戦争を)忘れるな、(戦争を)忘れてはならない」という悲痛な叫びを警告にして執筆したと思われることです。
また、この戯曲はスリリングな状況設定、意表を突く展開の巧みさによって、上質のサスペンスとしても満足できることであり、スリルとサスペンスにワクワクしながらこの平和を希求する舞台劇を楽しんでもらいたいと考えています。
息を潜めるようにアパートの一室に住む女アンナを斉藤深雪、その部屋に逃げ込んでくる政治犯ローデを声優としても活躍している小山力也、そしてローデを追うゲシュタポの大尉を島英臣が演じます。また、地区監視員のクルーナーを中吉卓郎、ユダヤ人の科学者カッツを中寛三のベテラン陣が脇をかためます。
尚、潤色のピーター・ストーンはシナリオライターとして映画「シャレード」のシナリオにも参加、他の作品でアカデミー脚本賞も受賞していますが、舞台のミュージカルの台本も数多く手がけており「タイタニック」「ミズ‐今年最高の女性‐」「1776年」で3回もトニー賞を受賞しています。
日本独文学会の会員の皆様は、通常A席5400円を4700円、B席4320円を3800円の割引料金でご覧いただけます。20年ぶりによみがえる、約2時間のスリリングな舞台にご期待下さい。
【あらすじ】
1945年4月30日、ソ連軍の猛攻の前に瓦礫の山と化し、断末魔の咆哮をあげるナチス・ドイツ第三帝国の首都ベルリン。———
とあるアパートの3階の部屋。凄まじい爆撃の音がする中、カーテンを閉じた暗い部屋でひとりベッドでたばこを吸っている女・アンナ。そこへ、隣部屋の女中グレタがやってくる。彼女はアンナにいろいろな噂話をするが、アンナは迷惑な顔をするだけである。グレタが噂話を続けているとクルーナーが入ってくる。50過ぎのその男は地区の監視役であり、ヒトラー気取りでふたりに接する。クルーナーとグレタが部屋を出て行くと、アンナは再びベッドに横たわる。
と、突然、男が入ってくる。オットー・ヴィルケという男を頼って来たという。しかし、アンナからヴィルケは死んだことを聞かされる。男はドイツ人の政治犯でユダヤ人収容所の実態を暴露するために収容所を脱走してきたのだった。アンナは男を追い返そうとするが、そこへグレタがゲシュタポが来たことをアンナに知らせに来る。間もなくゲシュタポの隊長シュミットが部下を連れて入ってくるが……。
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