<阪神ドイツ文学会>阪神ドイツ文学会第210回研究発表会のご案内
阪神ドイツ文学会第210回研究発表会のご案内


下記のシンポジウムおよび講演会を開催いたしますので、ご案内申し上げます。
阪神ドイツ文学会会員以外の方のご参加も歓迎致します。参加費は無料です。

日時: 2012年12月8日(土)13時30分より(今回は土曜日開催です)
場所:大阪音楽大学 第1キャンパス B館4階401教室(受付も4階の予定)
住所: 豊中市庄内幸町1-1-8 電話番号: 06-6334-2131 (代)
*阪急宝塚線「庄内」下車 西出口より北西に700m 徒歩約9分

(お車での来場はご遠慮ください。また会場建物にはエレベーターがありません。)
*道順:庄内駅西出口から宝塚方向に進み、三井住友銀行を通り過ぎた角を左折、次の信号を渡って右折、直進する。
[プログラムI]

シンポジウム:「多言語主義の光と影 ― 岐路に立つルクセンブルクの3言語主義」
《シンポジウムの趣旨》

ルクセンブルクは建国当初からドイツ語圏に属していながら、ルクセンブルク語、ドイツ語、フランス語の3言語を国家の公用語とし、3言語の習得がルクセンブルク人のアイデンティティにもなっている。こうした「母語+2言語」の習得を目指す言語政策は、EUが掲げる複言語主義の理念を体現する理想的なものといえよう。しかし、ゲルマン系言語を母語とするルクセンブルク人にとって、高度なフランス語能力を習得するにはかなりの努力が求められる。また、4割を超える外国人住民の多くは、ポルトガル語等のロマンス系言語を母語としており、ゲルマン系のルクセンブルク語とドイツ語の習得は容易ではない。特に小学校では、1年次から授業言語として使用されるドイツ語ができない生徒が少なくなく、大きな問題になっている。本シンポジウムでは、ドイツ語圏に属しながらもフランス語を事実上の上位言語とする3言語主義を墨守するルクセンブルクの史的背景を振り返りながら、今後の展望について論議したい。

*問題提起 高橋秀彰
「シンポジウムの概要―多言語国家としてのルクセンブルクについて」

*報告1  田原憲和
「19世紀のルクセンブルクにおけるルクセンブルク文化創出と3言語主義」

ルクセンブルクは1839年に大公国として独立したが、これはルクセンブルク国民が望んだものではなかった。独立時にルクセンブルクはフランス語圏を喪失したものの、その後も一貫してフランス語を公用語として維持してきた。独立後、ルクセンブルク人としてのアイデンティティ確立のために重要な役割を担ったのがフランス語と、彼らの母語であるルクセンブルク語の存在である。本発表では、詩人・劇作家として高名なディックスの活動を通じ、かつてドイツ語の方言とみなされていたルクセンブルク語が個別言語として確立された過程を概観するとともに、ルクセンブルクの歴史においてルクセンブルク語が果たしてきた役割についても考察していく。

*報告2 田村建一
「多言語社会の教育問題―ルクセンブルクのポルトガル人を中心に―」

 フランス語、ドイツ語、ルクセンブルク語の3言語を公用語とするルクセンブルクでは、子どもたちに学校教育を通してこれらの言語を修得させることが最重要課題の一つである。ルクセンブルク語を母語とする子どもたちにおいても、社会階層によってはフランス語の習得に問題を抱えることが以前から指摘されているが、それと並び、数十年前から増加の一途をたどる外国人の児童生徒の問題も切実である。人口の約40%を占める外国人の中で、もっとも比率が高いのはポルトガル人(全人口の16%)であるが、その子どもたちの多くがドイツ語を媒介として行われる小学校での授業について行けず、その後の学習にも支障をきたすことが報告されている。本発表では、この問題に対する政府の対策や研究者から提起されている改革案について検討しながら、多言語社会における言語教育の将来について考察する。

*報告3 高橋秀彰
「ルクセンブルクの言語政策とアイデンティティ」

1984年の言語法は、ルクセンブルク語を「国語」(langue nationale)とし、ルクセンブルク語、ドイツ語、フランス語の公的使用を規定しながらも、フランス語に一定の優位性を与えている。現実には、アイデンティティの礎となるルクセンブルク語は話しことばを中心に限定的な機能を担っているのみで、司法や教育など重要な領域ではフランス語が中心的な役割を果たしている。ドイツ語は、ルクセンブルク語から言語的な距離が極めて近いためルクセンブルク語話者にとって習得しやすい言語なので、ドイツ語の使用域拡大は「楽な」選択肢となるはずだ。しかし、フランス語の優位性を守る政策は揺らぐことはない。ここには小国が生き延びるための知恵が垣間見られる。発表では、ドイツ語圏にありながら、ドイツ語が微妙な立場にあるルクセンブルクの3言語主義は、アイデンティティ構築と政治力学の狭間で紡ぎ出された言語政策であることを論じる。

[プログラムII]
Hermann Wündrich 氏(ベルリーナー・アンサンブル文芸部員)講演
講演題目:Bertolt Brechts Theatertheorien in der heutigen Theaterpraxis des Berliner Ensembles -- Vom Bedeutungswandel formaler Strukturen.

講演要旨:Bertolt Brecht ist der wohl einzige Autor der Moderne, der nicht nur eine Dramaturgie des modernen Theaters sondern auch eine Aufführungstheorie entwickelt hat. Unter dem Begriff „Episches Theater“ haben seine Überlegungen auch über 50 Jahre nach seinem Tod großen Einfluss. Aber jede Methode hat eine Geschichtlichkeit des Sich-Ausdrückens. Stellt sich – beispielsweise - bei Brechts Verfremdungstechnik heute überhaupt noch ein, was damit beabsichtigt war? Oder was für eine Wirkung zeitigt heute der „soziale Gestus“ des Schauspielers? usw.
Ein Vergleich einzelnen Szenen (Filmausschnitte) aus den Inszenierungen von ARTURO UI am BE aus dem Jahr 1959 und 1995 sollen helfen, Antworten zu finden auf die Fragen nach Aktualität, Vergänglichkeit und Weiterentwicklung der Theatertheorien Brechts.