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アジアゲルマニスト会議2012北京大会に参加して(S. Kido)[J]

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アジア・ゲルマニスト会議関連
  投稿日: 2012-9-26 22:50
木戸 紗織(大阪市立大学大学院後期博士課程)
今年の8月、予定より一年遅れてアジアゲルマニスト会議が北京で開かれました。前回の金沢大会から4年、折しも開催直前になって日中、日韓双方に領土問題が持ち上がり、落ち着かない状況の中行われた今回の北京大会でしたが、„Interlingualität – Interkulturalität – Interdisziplinarität: Grenzerweiterungen der Germanistik“というテーマのもと、日中韓そしてヨーロッパのゲルマニストがまさに寝食をともにした6日間の様子を、ごく一部ですがお伝えしたいと思います。
今回、私が参加を決めた理由は2つあります。まず一つ目が、北京での開催であること。今回参加することは前回の金沢大会からすでに考えていたのですが、いざ申し込もうとすると、周囲では北京だから参加を見送るという意見が大勢を占めていました。たしかに、Germanistikに身を置いているとヨーロッパに行く機会はあってもアジアにはなかなか縁がなく、中でも中国は気軽に訪れにくい国のひとつでしょう。しかし、だからこそこういう機会を生かすべきだと思いますし、実際、他の参加者の多くが同じ動機で参加していました。もう一つの理由は、日本独文学会を通してDAADより支給された若手参加者のための旅費補助の存在です。今大会は参加費が900USドル(7万円超)と高く、結論から言えばこの金額は納得のいくものなのですが、渡航費も含めると予算的に躊躇する金額でした。そんな中で、参加費に相当する額の補助をいただけたことは大変ありがたいことですし、周囲が渋る中であえて参加を決断する強い後押しになりました。

研究発表は3日間、6つのセクションに分かれて行われました。私が参加したセクション2(Sprachwissenschaft)は2番目に発表者の多いセクションだったのですが、発表も質疑応答も常に時間を気にしながら急ぎ足で進められました。しかし、セクションによって90分間に予定されている人数が1人から5人と大きな差があり、質疑応答の時間がなかったり途中から他のセクションに移動しづらかったりしたことから、人数配分やセクションの組み方にもっと配慮があってもよかったのではないかと思います。会場には机がコの字型に並べられ、自分が発表をする際にもまた人の発表を聞く際にも、全員の顔が見えたのが印象的でした。

実際に参加して最も強く感じたことは、ここでは発表をするのも聞くのも難しいということです。日中韓それぞれに独自のGermanistikがあり、そこにそれぞれの風土や倫理観が加わって、同じGermanistikでありながら参加者はすべて異なる土台を持っています。そのため、ゲルマニストであるというだけでは十分に発信することも受信することもできないのです。IVGのような国際会議では„Germanistik“ や「ドイツ語圏」といったキーワードが強い求心力を持っていますが、アジアゲルマニスト会議においては、ゲルマニストであることに加えて参加者それぞれのローカルな要素が強く影響していると感じました。

本来なら研究発表の様子だけで報告を終えるべきなのですが、参加者としてはやはり2度のExkursionと豪華な食事に触れないわけにはいかないでしょう。上記の3日間の発表は実際には一日おきに行われており、その間曲阜へのExkursionと北京市内観光が予定されていたのです。すべてにおいて前回の金沢大会が基準になっている私にとってこのスケジュールはあまりにも意外でしたが、実行委員の方々はExkursionに並々ならぬ熱意を注いでおられ、大会の成否はExkursionにかかっていると言わんばかりの気合の入れようでした。

曲阜とは、儒教の祖である孔子の故郷です。早朝5時半に出発し、新幹線とバスを乗り継いで世界遺産の町を目指します。100名を超すゲルマニストが揃いのTシャツを着て新幹線から降り立つ様は、さぞかし興味深いものだったでしょう。現地では4名の学生スタッフから、キリストよりはるか以前に生まれた孔子とその教えについて解説を受けました。入念な下調べのもと、建物の一つ一つについて丁寧に説明してくださったのですが、敷地があまりにも広く、また当日雨だったこともあり、本殿にたどり着く前に参加者の方が音を上げてしまいました。世界遺産に指定されている孔廟(孔子を祭る廟)、孔府(孔子一族の住居)、孔林(孔子一族の墓所)を見学し、中国が誇る悠久の歴史と広大な土地に圧倒された一日でした。

2日目の発表をはさんで次は北京市内観光です。ここでは伝統コースとモダンコースの2つが用意されており、私は伝統コースに参加しました。こちらのコースは、万里の長城、紫禁城そして伝統的な町並みが残る胡同地区の見学という、まさに中国の歴史を凝縮したような内容です。Germanistikを専攻していて万里の長城を見る機会に巡り合えるというのも、アジアゲルマニスト会議の醍醐味でしょう。時間の関係で紫禁城に入れないというハプニングも、終わってみれば北京大会の貴重な思い出です。



もう一つ、「よいホストとはゲストを空腹にさせないものだ」という実行委員長の言葉に象徴されるように、食事へのこだわりも忘れてはなりません。発表初日から、予定を終えるや否やバスに飛び乗り、はるばる2時間かけて北京ダックの老舗へと向かいました。また、二日目の発表後にはAbend der interkulturellen Kulinaristikと銘打たれたパーティーがあり、解放されたバルコニーで料理の実演や生演奏を楽しみました。そして、最終日の発表の後には世界遺産に指定されている頤和園にて会食が行われました。ここはもともと夏の離宮で、廃墟となっていたのを西太后が海軍の予算を流用してまで再建したという歴史ある庭園です。かつて国を傾ける要因となったものが今では重要な収入源になっている…というのはどこかで聞いたことのある話ですが、ここで我々は遊覧船での短いクルーズを満喫した後、西太后も鑑賞したであろう舞台を見ながら宮廷料理を堪能しました。料理の素晴らしさは言うまでもありませんが、店員はみな清朝の衣装を着ており、舞台では京劇などの演目が次々に催され、まさに大会を締めくくる盛大なディナーとなりました。



発表の様子よりもその他の報告に力が入ってしまいましたが、参加費にはこれらに加えて宿泊費やすべての食事が含まれており、到着から出発まですべてがコーディネートされていました。また、宿泊場所と発表会場が隣接していたため、移動の手間もなく、宿泊場所を手配する煩わしさもありませんでした。とりわけ、直前の領土問題で対日感情が悪化しているという状況下では、最良の環境だったのかもしれません。参加者は文字通り6日間寝食を共にし、質疑応答の際に話しきれなかったことをその後の食事や翌日のバスの中で論じ合ったのでした。Exkursionのおかげで中国という近くて遠い国を知る機会にもなり、Germanistikを通して中国を学んだ大会でもありました。領土問題の余波か、帰国直後にもまさに北京市内で新たな事件が起こりましたが、私が体験した限りでは地下鉄でも商店でも日本人だからといって不利益を被ることはありませんでした。日韓関係も同じく複雑な状況でしたが、韓国からの参加者とドイツ語を介して接することができたのはアジアゲルマニスト会議だからこそでしょう。そういう意味でもまさにInterlingualität – Interkulturalität – Interdisziplinaritätがテーマとなった北京大会でした。

知り合った方の多くが日中韓すべての大会に参加したとおっしゃっておられましたので、私も次に韓国で行われる大会に参加し、全大会参加を目指したいと思います。

木戸 紗織(大阪市立大学大学院後期博士課程)
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