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ドイツ演劇は楽しめるか?(H.Nemoto)[J]

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演劇批評
  投稿日: 2008-6-26 11:15
根本晴美(演劇プロデューサー・世田谷パブリックシアター)
これまでドイツ演劇を楽しく観たことがない。そんなに多くのドイツ演劇を観ているわけではないが、楽しむためではなく勉強するために観ようと思うことが多い。フォルクスビューネしかり、ベルリーナ・アンサンブルしかりである。が、今回は、タイトルに惹かれて「観たい」と思った。
ドラマ・リーディング『醜男(ぶおとこ)』。原題 "Der Häßliche"、ベルリンのシャウビューネ劇場の若き座付き作家であるMarius von Mayenburgの作品だ。これを三軒茶屋・シアタートラムで6月13日(金)・14日(土)の2日間ドラマリーディングとして上演した。
内藤洋子による翻訳は軽快で、台詞が小気味好いリズムを刻む。タイトルも潔く、『醜男(ぶおとこ)』。ドイツ語の原題の発音の強さに合わせるために、「おとこ」としたそうだが、これだけでちょっと面白い。

内容も期待を裏切らなかった。レッテという主人公が上司から「顔が醜すぎるので新製品のプレゼンテーションは任せられない」と告げられショックを受ける。整形手術をし、素晴らしい顔を手に入れるのだが、その顔のせいで彼は自己のアイデンティティも信用も妻も失い彼の周りの世界全部が破滅していく…というお話だった。

ドラマ・リーディングなので、基本は「戯曲を読む」のだが、冒頭一般上演のような演出の工夫が施されていた。舞台には長方形の机が4台と椅子が4脚ある。4人の出演者が元気良く出てくると、まず机を放射状に並べ、椅子を用意し、1人が袋からペットボトルの水を取り出してみんなに渡す。ある人はホルダーで首からかけ、ある人は中に何か粉末の粉を入れたりする。準備万端「さぁ、読みますよ~!」という仕掛けだ。この導入部は原作にはなく、演出家が付加したシーンだそうだ。原作にはト書きが殆どないそうで、公演後のポスト・トークで演出のノゾエ征爾氏は「面白い本があったから、みんなで、ちょっとやってみようじゃないか」というつもりで冒頭のシーンを作ったと語っていた。誰もがこの作品に入り易くするための演出だそうだ。ドイツ演劇というと、社会批判性に富んだ内容だったり、表現が戯曲を破壊するというある種のディコンストラクションの手法をとっていたりするんじゃないか…という先入観をこの演出が見事に崩し、肩の力を抜いてまっさらの状態で戯曲へと導いてくれた。

誰からも愛される顔と引換えに自分の存在意義を失っていく主人公の姿は、真面目に努力してきたのに突然リストラを言い渡され、自分の居場所や成果や向上心など全ての価値観が覆される現代社会のゆがんだ現実と重なり、背筋がゾッとするほど恐ろしかった。明らかに社会批判的作風は堅守し、重苦しいテーマを笑わせながら淡々と突きつける作家の手腕は、すごい。*ドイツ演劇は楽しめるのか?⇒楽しめた! マイエンブルクの作品は是非また観てみたい。

根本晴美(演劇プロデューサー・世田谷パブリックシアター)
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