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「参加せんと分からん」(K.Ikeda)[J]

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ゴールデン・リレーエッセイ
  投稿日: 2007-10-14 10:53
池田 紘一(長崎外国語大学)
 日本で初めてのアジア・ゲルマニスト会議を西日本支部の担当で福岡の地で開催してもらえないか、保坂一夫理事長からこう相談を受けたとき、私は躊躇なく協力を約束した。危機に瀕している日本のゲルマニスティクの現状打開に少しでも役立つことであれば何でもやってみる、これを常日頃から信条としていた私は、またとないチャンスだと思った。特に、九州・山口・沖縄は東京や関西と違って、外国の優れたゲルマニストと出会う機会も少ない。学会員にも、学生たちにも刺激になる。一般市民にもアピールできる。
 幸いこの思いは支部会員にも伝わった。1997年12月、会員の一致団結のもとに初めての沖縄での全国学会を成功させた高揚の余韻も加勢した。難題の会場も九州産業大学所属の会員の努力で、その立派な施設を利用できることになり、大学から助成金まで出していただいた。5つのセクションで100に及ぶ研究発表がある。しかも質疑応答に重きを置く。その司会者の半数は支部から出してもらいたいという学会本部の要請には一瞬頭をかかえたが、私が指名した会員諸氏の誰ひとりとして尻込みする者はいなかった。司会者総数66人中、37人を支部会員が占めた。この会議はそういう意味で、私にとってはまず何よりも西日本支部会員の実力と結束力を示しえた稀有の機会として強く記憶に残っている。
 しかしそれと同じくらいに印象深かったのは、韓国、中国、台湾のゲルマニストとの交流である。会議においてのみならず、博多の夜の三々五々の酒杯を傾けながらの議論も実に有益だったと思う。私は日本のゲルマニスティクの活路の一つとして、東アジアという視点の重要性を改めて考えさせられた。危機を打開するには歴史的反省がなくてはならない。日本、中国、韓国の近代化の中で、ゲルマニスティクがいかなる位置を占め、いかなる発展を辿り、いかなる精神的・文化的葛藤を閲したか、共通するものと相違するものは何か、つまり東アジアにおける近代化という枠組みの中でゲルマニスティクの過去・現在・未来を問い直してみる、その必要性をいまさらながらに痛感したのである。
 この会議には容易には説明しがたい発見と魅力がある。博多名物「辛子明太」の有名なテレビ広告にこういうものがある。外国人のお客が店のおかみさんに「コレナンデスカ」と尋ねると、おかみさんは明太の一切れを楊枝に刺して客の口元に差し出し、「食べんと分からん」と言う。そうである。「参加せんと分からん」、これがアジア・ゲルマニスト会議を経験した私の実感である。

池田 紘一(長崎外国語大学)
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