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テュービンゲンで感じたこと(Y.Hosaka)[J]

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学術コラム
  投稿日: 2007-9-19 13:56
保阪靖人(首都大学東京)
2007年4月に、10日ほどドイツに行った。 4月といえば、新学期が始まる忙しい時期で、特に大学の教務の仕事をいろいろと担当しているため、何事かと言われそうなのであるが、なかなかない機会なので何とか出かけた。 1年以上留学をしていたはずなのに、この時期のドイツは本当にすばらしいことを忘れていて、おかげで花も緑もアスパラも楽しむことができた。
このコラムは、ドイツの学問風景の一部を書くことが目的であった。先を急ごう。今回の滞在は、テュービンゲン大学(正式名 Eberhard Karls Universität Tübingen) の招待であり、DAADが旅費を援助している。この大学の同窓生の何人かを招待した催しであった。総勢は13名で、言語学、文学、コンピュータ、古生物学、数学とばらばらの領域の専門家で、以前にテュービンゲン大学で博士号を取得した人も、現在取得のために研究者として滞在している人もいる。参加者は、ブラジル、東欧、北欧からで、アジアからは私だけであった。Alumni Expertenseminarと銘打たれていた。私が気になったのは、Alumni という言葉である。ここ数年この「同窓生」を通じた学生の交流、学問の交流を促進させようという動きが顕著であると感じていたが、この催しもその一環であった(詳しくは、http://www.alumni.uni-tuebingen.de/ を)。たいていの日本の独和辞典にはこの単語がないが、今後は、Alumni(「同窓生・卒業生」の複数形)や、その単数形であるAlumnusが記載されるようになるだろう。

ヨーロッパの学生支援のプログラムは、Erasmusなどがあるが、EU全体で研究者にとって大きな資金となるのは、Marie-Curie-Massnahmen (The Marie Curie Actions) であり、申し込みは英語で、 期限厳守、フォントはArial 10 と決まっているなど、かなり厳密である。締め切りは絶対のようで、東欧からの申し込みだと時差があるので、助かったなどという話も聞いた。研究計画においてはヨーロッパにおける研究倫理をパスする必要もある。たとえば、私が所属する教室では脳波研究も行っているので、これなどは、研究倫理審査の対象となる。大学で審査するだけでなく、ヨーロッパの基準となると、準備においてもかなり大変であることが容易に想像される。今回のセミナーは、このようなプロジェクトを紹介するとともに、「いかに、自分にマッチしたプロジェクト・スポンサーを見つけるか」、「書類はどう書くか」、「どのような文体で書くのか」、「そのときにどのような要因(Infrastrukturとか)が重要なのか」という、資金獲得のための計画・書類作成のための講座であった。かなり実践的である。テュービンゲン大学では、このようなプロジェクト申請や、スポンサー探しの相談を受ける会社(卒業生が経営)まで設立していて、有効なプロジェクトの獲得、優秀な学生・教員・研究者の獲得、招聘に関してかなり意欲的である。

 マスコミ向けにわかりやすく研究内容を書くことについての講座もあり、「名詞文体をやめよう」とか、「普通の人にわかりやすく」というのを聞くと、ドイツ語の文章は入門書においても、英米の入門書と比べて難しいために、学生に読ませる本に困っている私など、苦笑してしまう。これからは文体や、テキストなども変わるのだろうかと、少々期待もした。現在「全入時代」の日本と同じように、ドイツでも学生が減っていく傾向にある。魅力ある大学にするという動きはかなり進んできている。研究ではなく、教育専門の教員を雇う話もかなり出てきているようで、教育か研究かというのはドイツでも同じ問題があるようだ。2007年の夏学期からテュービンゲン大学があるBaden-Württemberg 州でも学期ごとに500ユーロの授業料が導入されたが、どうもテュービンゲンではベルリンほど反対運動が盛り上がらなかったようだ。こちらの方が豊かなのだろうか。最初にかかる費用はすべて込みで602ユーロというところ。ただし、Bachelor や、Masterのコースも確実に増えている。それらのコースではたいてい英語で授業が行われていて、Master of European Studies(1年間コース)などは、授業料が年間2.500ユーロと聞いて耳を疑ったが、グローバリゼーションというのは、こういうことになることらしい。

 英語だけのコースがあるというと、英語が力を増している印象を与えるかもしれない。しかしながら、様々な国の研究者、学生にとってはドイツというのは奨学金があり、施設も整い、生活費がそれほどなくてもある程度生活できるとても魅力ある環境であり、たくさんの留学生(一番多いのはイタリアとのこと)が来ていて、ドイツで学ぶ、ドイツ語を話すことの重要性をとても感じたのも今回のセミナーを通じてであった。東欧では、大学の教授でもそれだけで暮らすことはできない国もあり、結局仕事をドイツで探すことになるケースもかなりあり、研究者を集める国として、ドイツはとても魅力的であることをかなり強く感じた。そして、研究者としてドイツでやっていくには、英語はさておいて、ドイツ語はとても重要なのである。

 今年は、テュービンゲン大学に数学科ができてから500年だそうだ。この伝統を保ちながら、学生・研究者のネットワークを作って地理的なハンディ(テュービンゲンは交通の便が悪く、何かのマスコミ発表などする場合に不便であるということはかねてより指摘されていていた)をはねのけて、大学としてさらに発展しようとする姿勢には非常に得るところが大きかった。だだ、留学当時からの私の指導教授に会って、「早く論文をどんどん書きなさい」といわれたのはちょっと困りましたが...!

保阪靖人(首都大学東京)

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