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パリの空の下思ったこと-第11回IVGに参加して(K.Hamazaki)[J]

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国際学会関連報告
  投稿日: 2006-2-18 0:06
浜崎桂子(Hamazaki Keiko 神戸市外国語大学)
例年にない寒さの厳しい冬の空を眺めていると、過ぎし夏の晴れ渡ったパリの空は、ずいぶん遠い過去のことのように思われる。(これは、筆者の怠慢でこのコラムを書くのがずいぶん遅くなってしまったためなのだが。関係のみなさま、ごめんなさい。)
2005年8月の終わり、ソルボンヌ大学(パリ第4大学)で行われた第11回IVG(ドイツ語学文学国際学会)は、「諸文化の葛藤の中のドイツ研究」(Germanistik im Konflikt der Kulturen)をテーマに、1000人を超える各国のゲルマニスト(ドイツ語・ドイツ文学研究者)が参加し、30のセクションで、合計700を越える発表が行われた。Auslandsgermanistik(ドイツ語圏以外の地で行われるドイツ研究)提唱の地であるフランスでは、前回2000年にウィーンで行われた第10回会議よりも、より明確にドイツ語圏以外でのドイツ研究の意義、可能性が議論されたように思われる。当然のことながら、このような大規模な会議のすべてを体験することは不可能であるし、それをお伝えする力量も筆者は持たないので、ここでは、ごく私的な感想を書きとめるにとどめたい。

今回の会議では、個人的関心から、おもにドイツ語圏の移民文学、異文化状況をテーマにしたセクションや発表を聞き歩いたが、こういった研究テーマについての関心が、5年前のウィーン会議と比較して、非常に大きくまた多様になっていることを痛感した。前回の会議では、移民の出身国のゲルマニストが、同郷のドイツ語作家について、同じ文化、言語を共有する研究者という立場から分析する視点が目についたのだが(たとえば、トルコの研究者がトルコ出身のドイツ語作家を、ルーマニアの研究者がルーマニアのドイツ語作家を論じる)、今回の会議では、もともと自国の移民文学研究が盛んである英国、アメリカの研究者はもちろん、ドイツの若手の研究者による発表も増え、関心の高さをうかがわせた。個々の作家のテクストの紹介という段階を越えて、社会言語学的アプローチ、文化学的アプローチなどさまざまな研究の視点が提示され、また、英米のカルチュラル・スタディーズ、移民研究の方法論をドイツの文化学の立場から客観的に論じる視点なども見られたのは興味深かった。
会議終盤、「ドイツ語圏外のドイツ研究の成立」(Entstehung der Auslandsgermanistiken)と題されたパネルディスカッションでは、ドイツ、インド、ルーマニア、ブラジル、フランスのそれぞれの提言者から、各国のドイツ語・文学研究(Germanistik)が置かれている状況と、今後の展望についての報告があった。それぞれのポスト植民地状況、歴史的条件の違いはあるものの、フンボルト的な教養概念が、それぞれの地のドイツ語・文学研究において、また、大学という研究・教育機関に大きな影響を与えていたことが確認された。同時に、その教養を保持する場としての大学が、グローバルな経済システムの中で、地球のどの地域においても機能の変換を迫られていること、その中でも特に、存続の危機に直面している文学部、あるいは英語(アメリカ語)以外の言語文化を研究する学科は、その存在意義を積極的にアピールすべきであること、それも、非常に直接的に経済的利害関係のバランス・シートを提示する必要性を意識すべきであることが提唱された。つまりは、外部機関にメリットを説明し、(もちろん研究助成金を獲得することも目指し)一方で、文化政策、大学政策に対して提言していくような立場を確保するべきだ、ということのようである。大学や文学部の構造改革、ドイツ語学習者の減少といった、日本の大学でも10年来議論されている問題を考えるとき、日本における(あるいは各地方自治体の)大学政策や文化政策を批判するだけでは不十分であることに気づかされた議論であった。
同じ日の午後、「正書法」についてのパネルディスカッションにおいて、推進派と反対派が、それぞれいかに新正書法が便利であるか、あるいはそうでないかという例をあげるにとどまっていた議論に業を煮やしたフロアから、唯一アフリカ大陸からの参加者であったトーゴのゲルマニストが、「ドイツ語話者、学習者を増やすもっとも根本的な方法は、ドイツの移民政策と少子化対策だ。小手先の正書法改革よりもドイツ語の地位を上げる国の政策を。」と発言したのは、いろいろな意味で印象深かった。
言語政策は常に国力増強政策と結びついているし、日本と同じくドイツもまた、かつては帝国主義、植民地主義の枠組みの中で言語政策に力を注いだ時期がある。その歴史の轍を踏まずに、ドイツ語、あるいはドイツ文化、文学研究の存在意義をいかに反省しつつ客観的な評価を得るか。これは、ドイツ本国のみならず、それぞれの歴史の中で営まれている各地のドイツ語・文学研究が、国際的に連携しながら取り組むべきテーマなのだと思われた。

浜崎桂子(Hamazaki Keiko 神戸市外国語大学)
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