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揺れる心(M.Iida)[J]

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映画批評
  投稿日: 2006-1-24 9:36
飯田道子(立教大学)
『白バラの祈り―ゾフィー・ショル、最期の日々』
Sophie Scholl - die letzten Tage
監督:マルク・ローテムント
出演:ユリア・イェンチ アレクサンダー・ヘルト
2005年ドイツ作品

第55回ベルリン国際映画祭 銀熊賞・最優秀監督賞・最優秀女優賞受賞


 ナチス政権下、ミュンヒェンの学生たちを中心にくり広げられた白バラ抵抗運動はこれまでにも何度か映画化されているが、この作品は、ゾフィー・ショルと兄のハンスが捕らえられてから処刑されるまでの5日間に重点を絞っている点が特徴だ。はじめは無実を主張していたゾフィーが、ハンスが全面供述したことで、もはや罪を逃れられないと悟ると、今度は一転して自分の行動の正当性を訴えはじめる。死をもおそれず毅然と体制に立ち向かっていくさまが、新たに発見されたゾフィーの尋問記録を忠実に再現しながら描かれる。

 映画の大半が費やされているゾフィーとゲシュタポの尋問官モーアのやりとりの場面で興味深いのは、尋問官のモーア像だ。ゲシュタポの尋問官というと、血も涙もない人間を想像してしまいがちだが、モーアの場合は、ゾフィーの無実をいったんは信じてしまったり、後には彼女に救いの手をさしのべようとしたりと、実に人間的なのだ。面会に来た両親との別れを終えて涙ぐむ彼女をじっと見つめるモーアの表情が印象に残る。ゲシュタポだって揺れ動く人間だったのだ、という新しい切り口を見せている。

 監督のマルク・ローテムントは1968年生まれだ。まだ若い映画監督が、どうしてこういう映画を作ったのだろうか。聞けば、彼のおばあさんが国家からサポートを受けていたオリンピック選手だったのだそうだ。身内が有名なナチ党員だったことが映画作りの大きな要因となっている例で思い起こされる最近の作品には、Malte Ludin(マルテ・ルゥディン)監督の 2 oder 3 Dinge, die ich von ihm weiß(『彼について私が知っている二、三の事柄』)がある。昨年の夏、ベルリンで大変話題になっていたドキュメンタリー映画だ。父親が SA高官で、戦後処刑されたことが、半世紀以上を経て母の死を契機に明らかになる。監督自身の話なので、家族の修羅場がそのまま写しとられていて、作り物にはないリアルさがあった。こちらも日本での公開が待たれる作品である。

 ゾフィーを演じたユリア・イェンチは、最近活躍がめざましい女優だ。ダニエル・ブリュールと共演した『ベルリン、僕らの革命』(2004年)が記憶に新しいが、今回の作品では、強さの下に揺れ動く若い女性の内面を見事に演じている。気丈に尋問に耐えながらも、ひとりになった時に声をしぼって叫ぶ姿、最期の言葉を書けと渡された鉛筆をぶるぶると震える手でつかもうとする姿など、生前の彼女に接した人々へのインタビューに基づいて、死を目前にしたゾフィーの心情に迫ろうとする場面がちりばめられている。しかしやはり忘れられないのは、モーアを演じたアレクサンダー・ヘルトの演技だろう。これまでの白バラ映画にはなかった人物像を見せてくれた。この作品の公開に合わせて、東京ドイツ文化センターで『白バラ映画祭』(1月25日~27日)が行われる。この機会に、一連の白バラ映画を今一度見られることをお勧めしたい。

飯田道子(立教大学)
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