第47回語学ゼミナールに参加して (A. Takahata) [J]   作成日:2019/11/06
 2019年9月3日から6日にかけて、コープイン京都で第47回目となる語学ゼミナールが開催されました。今回の総合テーマは„Frames als universelles Konzeptformat und Mittel der sprachlichen Analyse“で、招待講師であるデュッセルドルフ大学のSebastian Löbner先生による講演のほか、アジア交流ゲストとして南京大学から来てくださったLingling Chang先生の講演、参加者による研究発表があり、盛りだくさんな4日間となりました。語学ゼミナールに参加するのは今回が初めてでしたが、和気藹々とした雰囲気の中で、先生方、先輩方に温かく迎えていただきながら、たくさんの貴重な経験・勉強をさせていただきました。ゼミナールの様子について、拙文ながらご紹介させていただきたいと思います。


 招待講師のLöbner先生のご講演は、1日目の夜、2日目と3日目の午前の3回にわけて行われました。1回目は、今回のテーマであるフレームについての導入的な講義で、フレームおよびそれを構成する属性と値の定義、その表示のしかたを、パスポートを例にとってわかりやすく教えてくださいました。フレームという概念については大学の授業で少し習っていたものの、講義で示された精緻な定義づけによって整備されたシステムと、「人間が認知するあらゆるものはフレームで表すことができる」というフレーム仮説は、私がぼんやりと抱いていたフレームに対するイメージを大きく変えるものでした。


 2回目の講義では、名詞の修飾や語形成の際の意味変化・意味合成が扱われました。2つのフレームを結びつけて新しい意味のフレームを生み出すUnifikationは、自由な意味の広がりを許すと同時に、元の語の意味がどのように合成されて新たな意味が生まれるのかが、直観的にも非常に理解しやすい操作であると思いました。


 最後に3回目の講義では、より大きな言語表現である、文の合成が扱われました。表現と、その表現が指示する外延、そして発話のコンテクストの3つのレベルのフレームが想定され、フレーム同士が属性と値の関係によって結び付けられることで、文法関係と語彙的な意味に加え、言語外的な発話時の状況や世界知を考慮した解釈を可能にするモデルが示されました。


 講義の内容は私には難しいところもありましたが、Löbner先生は日本語がおできになるので、意味論の用語が出てくるたびに日本語訳を挙げてくださり、その日のうちには藤縄先生が用語の対訳リストを作ってくださったため、非常に理解の助けとなりました。また、講義の合間にはグループワークの時間があって、そこで同じグループの先生方・先輩方に教わりながら講義の内容に沿った問題を解く中で、理解をより深めることができました。さらに、最終日には日本語でのワークショップの時間があり、講義の内容を日本語で復習しつつ、参加者が疑問点をまとめてLöbner先生に質問できる機会がありました。講義の間は内容を理解するのに精一杯だったので、この時間があったことで、理解できていなかった点を補うことはもちろん、自分以外の参加者が抱いた疑問によって別の視点を得ることができました。


 2日目の午後には、アジアゲストのChang先生によるご講演がありました。先生は、ドイツ語のいわゆる所有の与格と属格の関係と、対応する中国語の表現をそれぞれ豊富なデータによって比較対照してくださいました。中国語とドイツ語の対照研究にはこれまで触れる機会が少なく、同じ意味を日本語ではどう表現するだろうかと考えながら、非常に興味深く拝聴しました。


 また、2日目と3日目の午後には、様々な分野の先生方、先輩方がご自身の最新の研究成果を発表されました。発表内容もさることながら、聞き取りやすく引き付けるドイツ語での発表の仕方、論の流れが一目で読み取れるレジュメの構成など、難しい内容を短時間で分かりやすく伝える技術と、流暢なドイツ語で繰り広げられる質疑応答に圧倒されました。私も3日目に発表させていただき、内容・伝え方など諸々反省点ばかりでしたが、たくさんのお手本を前に勉強させていただける、とても貴重な機会だったと感じています。


 ゼミナール期間中の夜には懇親会があり、先生方、先輩方とプログラム中よりも近い距離でお話をすることができました。カジュアルなお話もたくさんうかがえて、遠い存在だった研究者の皆さんの輪に入れたようで嬉しく感じた一方、お酒の席でも研究の話で盛り上がることになる皆さんのご様子は、これから本格的に学問の道に入ることを志す身としては、やはり憧れの対象でもありました。


 最後に、4日間を通し、実行委員の皆さまをはじめ多くの方に大変お世話になり、助けていただきました。招待講師のLöbner先生、Chang先生、実行委員の皆さま、すべての参加者および関係者の皆さまに、この場をお借りしてお礼申し上げます。


高畑 明里(東京大学大学院修士課程)