カテゴリ一覧
 
オンライン状況
19 人のユーザが現在オンラインです。 (1 人のユーザが コラム を参照しています。)

登録ユーザ: 0
ゲスト: 19

もっと...
ログイン
ユーザ名:

パスワード:



パスワード紛失

第61回ドイツ文化ゼミナールに参加して (C. Tanimoto) [J]

カテゴリ : 
文化コラム
  投稿日: 2019-4-6 23:04
谷本知沙(慶應義塾大学後期博士課程)
2019年3月17日から22日まで長野県茅野市のリゾートホテル蓼科にて、第61回ドイツ文化ゼミナール(以下、文化ゼミ)が開催された。今回は、招待講師であるパーダーボルン大学のNorbert Otto Eke教授のほか、韓国・ドイツ・スイスの教員および学生、日本全国の教員、修士・博士課程の学生など、総勢約60名の参加者が集った。全5泊6日間のプログラムは、Eke先生による3回の講演と、参加者による講演および発表、グループディスカッション、その他(映画鑑賞・遠足等)で構成されていた。
第61回文化ゼミを総括するテーマは、「文学的ハビトゥス(literarischer Habitus)」である。ゼミ初日から翌日にかけて、実行委員長である香田先生およびEke先生より、全体テーマへの導入として、概念の歴史的経緯や問題設定についての講演がなされた。今日では社会学の概念として普及している「ハビトゥス(Habitus)」が、文学テクストにおいてどのように表れるのか、「文学的ハビトゥス(literarischer Habitus)」をいかに捉えるかが合宿全体を通して繰り返し問われた。2日目以降のグループディスカッションでは、時代もジャンルも異なる様々なテクストを元に活発に意見が交わされた。これらのテクストは、実行委員によって70余もの中から厳選されたという(実際の議論の盛況ぶりに、テクスト選択の大事さを改めて実感させられた)。ほとんどのグループでは博士課程の学生にディスカッションの司会進行が任され、そのことも手伝って若手が積極的に意見できたようだ。またグループワークの前後には、参加者によってハビトゥスと各自の研究領域を結びつけた発表が行われ、ハビトゥスに関わる多種多様な観点が提供された。もとより「ハビトゥス」がすべての現象を説明可能な万能な理論であるはずはないが、その視点がテクストをより深く読み込むための手掛かりを提供してくれた。

この合宿の魅力のひとつは、普段直接お会いする機会のない方々と親交を深められることである。筆者自身は、一週間も相部屋で過ごすことに不安を感じていたが、実際には、寝食を共にすることで、互いに刺激し合える新しい仲間に出会えるまたとない良い機会となった。また、ドイツ・スイスの若手研究者との交流も大変貴重な時間であった(彼ら若い研究者たちを招待したことは、香田実行委員長率いる現実行委員会の、文化ゼミ初の試みであったとのことだ)。全ての催しがドイツ語で行われる本ゼミでは、特にドイツ語で話すことに慣れない若手が意見をまとめられず言い淀む場面もあったが、そんな時はすかさず助け舟を出してディスカッションを大いに盛り上げてくれた。彼らはいつでも日本の「ハビトゥス」に興味津々で、筆者の考えも及ばぬ点に問いを投げかけ、こちらがうまく説明できず戸惑うこともあった。だが、年齢の近さもあって彼らとたくさんのコミュニケーションが取れたことは何よりの収穫だった。このご縁を大事にして、今後も継続して関係を築いていければと思う。

最終日にはお別れのパーティが催され、先生方へ素敵なプレゼントが贈られた。演劇を専門とするEke先生には能面(かのプレイボーイで有名な在原業平の面だ、という香田先生のご説明に対し、Eke先生は「妻にはその話は伏せておかなければ」と当意即妙の返答をなさり会場を沸かせた)、韓国のAhn先生には変幻自在な銀製のオブジェ、今年で記念すべき20回目の参加となった七字先生(茅野駅まで鈍行を使ってゼミの予習をするというスタイルを貫いたそうである)には万年筆が贈られた。そして、2年間文化ゼミの成功にご尽力くださった香田先生には、実行委員からのサプライズで、羽ペンとSiegelが(中世のハビトゥスに倣って)贈られた。
未だ食したことのない物のような、「タテシナ」という恐ろしげなそれは、口にしてみれば、案外美味しく頂くことができたけれども、筆者にとっては少し大人の味で、まだまだ消化不良である。合宿全体を通して、実行委員だけでなく参加された先生方の、後世を育てようとする気配りに感銘を受け、また今後研究を続けていくためのたくさんの刺激と活力をいただいたように思う。次回はドイツ語で臆せず意見できるよう、ひとまわり成長して参加したい。実行委員の方々は様々な不測の事態(マイクや機材がうまく機能しなかったり、タイムスケジュール上の問題など)にもジョークを交えながら柔軟に対応し、文化ゼミ全体を実りあるものへと導いてくださった。初参加かつ若輩者の筆者に、このようなコラムを執筆する機会を与えてくださった実行委員の皆様にこの場を借りて心より感謝申し上げます。

谷本知沙(慶應義塾大学後期博士課程)

東京・国立劇場にて。文化ゼミの終わりに東京の桜がちょうど開花し、パーダーボルンからの参加者は東京の桜を楽しんで帰国されました。
  • 閲覧 (1053)
Japanische Gesellschaft für Germanistik © 2005-2009