「一年の計」(R.Maeda)[J]   作成日:2006/01/09
「日本におけるドイツ年」の期間も半分以上が過ぎた。これからどんなイベントに行きましょうと考えながら,公式サイト( http://www.doitsu-nen.jp/index_JA.html )を眺める。「半分以上が過ぎた」などと書いたけれど,展覧会やコンサートは2006年4月を過ぎてもまだまだ盛りだくさん。12月まで続く連続コンサートもあり,「ドイツ年」はこれからいよいよ佳境に入るところ。実は,これまで知人や学生に「ドイツ年」のお奨め情報を紹介するのに追われ,自分はそれほど出かけていないことに気がついた。これではいけない。一年の計は元旦にありというので,以下,展覧会関係を中心にぜひ行きたい催しのごく一部を挙げてみる。
まず12月10日からお台場の日本科学未来館で開催中の「サイエンス+フィクション:ナノ世界とグローバルカルチャーのはざまで」。こうしたテーマはドイツの強みが全面展開される分野なので,水準の高い展示が期待できる(ミュンヘンの「ドイツ博物館」の展示を見れば一目瞭然)。つぎに気になるのが1月14日から東京オペラシティで開催される「アートと話す/アートを話す」。これはダイムラー・クライスラー社の美術コレクションの展覧会だが,企業メセナのドイツ的ありようを知る絶好の機会になりそうだ。さらに,1月28日から5月7日までの長期にわたって森美術館で開催される「東京-ベルリン/ベルリン-東京」。20世紀日独の文化の変遷をベルリン-東京という二都市間の交流と対比を軸に捉えようとする意欲的なもので,両都市の比較都市文化論を研究テーマとしている私などには絶対はずせない催し。1920年代から30年代にかけて,ベルリンと東京の都市文化には確かにひとつの同時代性があった。両都市の文化交流ないし Korrespondenz(照応)が今度の展覧会でどのようなイメージのなかに描き出されるのか,大変楽しみである。

展覧会は大好きだ。旅行のときは美術館・博物館を必ず訪れるし,どんなに高価で重たくてもカタログは入手して帰ることにしている。展覧会に行けば,短時間のうちにあるテーマをめぐるイメージの構造というか磁場というか,そうしたものをそれこそ視覚的に体験することができる。それにすぐれた展覧会ほど,講義やゼミでのプレゼンテーションで視覚資料をどのような戦略のもとに配列すべきかについて,重要なヒントを与えてくれる。そうした意味で,「日本におけるドイツ年」関連のこれからの展覧会に私は大いに期待している。

前田良三(立教大学)