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第1回東アジアドイツ語教員会議の報告 (M. Muramoto) [J]

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外国語教育コラム
  投稿日: 2017-9-15 12:38
村元麻衣(名古屋大学非常勤講師)
2016年10月29日、30日の2日間に渡り、第1回東アジアドイツ語教員会議が香港で開催され、中国、モンゴル、韓国、台湾、そして日本よりドイツ語教員が集まった(注1)。私はこれまで2度、ドイツのゲーテ・インスティトゥートでのドイツ語教員派遣プログラムに参加し、世界各国から集まった教員たちと共に、ドイツ語教育を通して学び合う機会に恵まれたが、ドイツ以外の場でのドイツ語教員の集まりに参加するのは、この東アジア会議が初めてとなった。
この会議でまず気がついたのは「故郷の香り」である。ドイツでの集まりの「香り」とは何かが違う。それは初めてソウルを訪れた時にも嗅いだ、あのお米の香りである。そしてコミュニケーションの場における香りも異なる。これまでの集まりでは、お互いの文化や考え方をまずきちんと言葉で伝える必要性が常にあった。ところがこの香港に集合した教員たちとの間には「伝えなければ伝わらない」という、心の奥の方でキーンと張り詰めるあの緊張感が湧かなかった。話し方や首の振り方もどことなく似ている。言葉を交わさなくても、何となくお互いの気持ちが通じ合い、「うん、そうなのよ!」と、思わず声が出る、話している相手と同様に首を振ってしまう瞬間が何度かあった。もちろん文化や歴史が異なるので、教育現場の違いや異なる問題点もたくさんあるはずだが、お互いに説明せずともよくわかる、という場面に度々遭遇した。

会議全体を通して感じたのは(これは他の国からの参加者とも話したことであるが)、もちろんドイツに行って世界中のドイツ語教員と学び合う機会も貴重だが、「箸の文化」の中での学びの場ももっとあるべきだという思いである。東洋文化を共有する者同士の交流の中での学びと、ドイツに集合する世界規模での学び、この2つは今後さらに連動していくことが望ましいだろう。その意味でも、第2回東アジア会議の開催を大いに期待したい。

ここまで会議の印象を大まかに思い返してみたが、ここで私自身の本会議参加への経緯を述べたい。
この会議の2日目に「私のデジタル版ドイツ語教室」というテーマでコンテストが開かれ、そこで発表する機会をいただいた。この会議の前の8月に遡るが、ちょうど、ベルリンのゲーテ・インスティトゥートで、「インターネットを用いた授業方法」を学ぶためのドイツ語教員派遣プログラムに参加していた。帰国後、後期の授業で早速インターネットを用いたプログラムを導入したところ、学生から歓声が上がった。その瞬間、これは授業に導入していかなければならない、という私の強いモチベーションのスイッチが入った。その後、ドイツで学んだ通りにはうまくいかないという問題にもぶつかったが、学生からの指摘やアドバイス、時に応援も受けながら試行錯誤していた中で、この発表の機会をいただくことになった。もうひとつの大きな幸運は、2015年10月より日本独文学会教員養成講座に参加していたことである。ちょうど東アジア会議開催直前に参加の教員養成講座のテーマが、「様々なメディアとICTの導入」であったため、インターネットを用いた授業のさらなる学びの機会につながり、また帰国して以来、ひとり悶々と試行錯誤し抱え込んでいた授業法の悩みを受け止めて下さった担当の先生より、適切なアドバイスをひとつひとつ丁寧にいただいたことも、幸運な経験となっていた。

ここで、この日本独文学会教員養成講座について触れておきたい。講座は2年間のプログラムである。異なるテーマ別に各専門の先生の指導のもと、ほぼ毎月そのテーマに関する知識を養い、他の受講生と共に議論し、課題を家に持ち帰る。課題のレポートはその後約1ヶ月かけて作成し提出する。提出したレポートは、翌月に他の受講生と共有し、担当の先生よりフィードバックをいただくことになる。以上がこのプログラムのなかの大まかな流れであるが、養成講座で扱われるテーマは教育の歴史、シラバスの意義について、書く力・聞く力を伸ばすための授業方法についてなどなど広範囲に及び、最終的にはこれらすべての学びを盛り込んだ授業計画を実際に自分で組み立て授業を行う。こうした養成講座での知識としての学びと、その知識を持ち帰り通常の授業に導入しながら(または授業を分析しながら)じっくり考察し内省する学び、同時にその間、疑問や問題点について同じ受講生とムードルの中で意見交換を行い、担当の先生からの指導もいただけるという統合的および重層的な学び、これをひとつのテーマごとにじっくり1ヶ月ほどかけることができる、というのがこの講座の特徴であり醍醐味であると思う。私はこの講座を受講するなかで、それまでたったひとり授業に向かい孤独に試行錯誤していた「一匹オオカミ教師」の皮を脱ぎ捨て、同様に日本中(東京、関西、東海地域からの受講生)で活動するドイツ語教員たちと共に、問題点や方法を共有し、共に学び合う温かい世界へと移り住むことができた。この講座のなかで特に印象に残ったのは、日ごろ話す機会のなかった大先輩の授業を見学することができたこと(教員養成講座というきっかけがなければ実現しなかったであろう)、同様に大先輩の先生が私の授業を見学してくださり、授業分析にご協力くださったことである。私はこの講座を通してお世話になったすべての先生から、教えるという行為の原点について教わったように思う。教えるとは、上から下方向に伸びる行為ではなく、教える側と学ぶ側の両者より手が伸びており、その手がお互いを引っ張りながら、両者が歩んでいく行為なのではないかと思う。今私の手は、学生にガッシリとつかまれており、互いに押したり引いたりしながら、授業という場を超えて学び合っている感覚を楽しんでいる。

こうして振り返ってみると、すべてのきっかけや出会いが、私をこのコンテストへと導いてきたように思われる。特に、初めてインターネットを導入した際の学生の歓声、そしてその後の学生からの励ましやアドバイスも私をここまで支え続けた。またインターネットを使う授業に慣れていない私を、辛抱強くサポートして下さる大学スタッフの存在なしには、授業が成立しなかった。そしてコンテストの直前には、ゲーテ・インスティトゥートの丸山智子さんからたくさんのアドバイスをいただいた。こういったひとつひとつの導きが、コンテストでの1位(2017年7月30日よりスイス・フリブールで開催されたIDTに参加するための奨学金)受賞という結果へと結びつけたのであろう。

最後に、このフリブールでの会議について簡単に触れておきたい。私にとってこれが初めてのIDT(Internationale Deutschlehrertagung(注2))参加となったわけだが、教育分野における幅広い視野からの議論の一部を体験でき、貴重な経験となった。ドイツ語教科書内の「ドイツ」がドイツ文化中心であり、オーストリアやスイス、リヒテンシュタインなどの文化や語彙が無視されている、といった議論は日本の教育現場ではあまり問題とならないため新鮮であった。また視覚障碍者のためのドイツ語の授業といった新しい課題に気づくよい機会にもなった。バスや船で少し移動するだけで、フランス語圏からドイツ語圏に変わる(看板や道路標識も変わる)という体験も新鮮であった。ひとつ気になったのは、物価の高いスイスでの開催ということで、貧しい国からの教員が参加しにくい国際会議だったのではないかという点である。参加できた教員の中にも、開催地の宿泊費が高かったため(または開催地の宿が少数であったため)近郊の街に宿を取らざるを得ず、そこから毎日通うことになり、夜や早朝のプログラムには参加できず悔しい思いをした参加者もいた。次回4年後にウィーンで開催のIDTが、こういった点も含め、今回のフリブールとはまた一味違う素晴らしい会議となることを期待したい。

さて、私は今月9月を以って教員養成講座を卒業することになる(注3)。この講座に出会うまでの私は、先に述べたように、授業の進め方はそれぞれ個々人が研究し乗り越えていくものだと思い込んでいたが、同じ現場で働く者同士、感じることや悩むことには必ず共通点がある。それをまず共有し、共に成長していくことの素晴らしさをこの講座で体験することができた。同じドイツ語教員同士、同じ語学を教える教員同士、またその他さまざまな教科を担当する教員同士、そして大学教育全体としてのまとまり、さらにひとつの地域、日本全体、そして世界へと教員同士の連携が広がっていくことで、ひとつひとつの授業がより改善され発展していくように思う。

村元麻衣(名古屋大学非常勤講師)

図1:Karussell(内側と外側の輪が逆方向に回り、パートナーが変わっていくペア練習)導入の授業風景
図2:インターネットを使った授業風景
図3:東アジアドイツ語教員会議2日目「私のデジタル版ドイツ語教室コンテスト」の一幕

(注1)第1回東アジアドイツ語教員会議ホームページ(最終閲覧 2017.09.07)。
https://www.goethe.de/ins/jp/de/spr/unt/ver/dlt.html
(注2)IDTホームページより、IDTの歴史(最終閲覧 2017.09.07)。
https://www.idt-2017.ch/index.php/geschichte-der-idt-50-jahre
(注3)日本独文学会ドイツ語教員養成・研修講座ホームページ(最終閲覧 2017.09.07)。
http://www.jgg.jp/modules/organisation/index.php?content_id=388

図1                                                  図2
                         















 図3
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