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ウグイスとヒグラシのなくころ(M. Segawa)[J]

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春期研究発表会報告
  投稿日: 2014-8-5 11:15
瀬川真由美 (麗澤大学)
 2013年の春、東京外国語大学で開催された日本独文学会春季研究発表会の1日目の夕刻、懇親会場で母校ということもあり、懐かしい面々に囲まれ気持ちよく「次回の春季研究発表会は麗澤大学で行います。タヌキもいます。ウサギもいます。皆様を私たちがお迎えいたします。どうぞお越しください。」と言ってしまいました。
 麗澤大学に戻れば業務はいつもと変わりなく山積みで、毎年のことながら、4月と5月は夏学期の履修について丁寧に学生に指導しなければならず、必要であれば(たいてい必要になるのですが)教務委員会で審議が重ねられ、4月から8月にかけては学部の学生さんに留学の説明会を幾度も開き、どこで何を学ぶのかや手続きの仕方をレクチャーし、留学のための書類書きをし、無事に有意義な留学生活を送ることを祈りつつ学生を送り出し、夏休みにはオープンキャンパスで高校生に本学の魅力を全力で伝え、9月には留学から帰国した学生の単位互換の作業をし、冬学期の履修について丁寧に学生に指導し、特に4年生は卒業がかかるのでさらに神経を使い、それから10月以降は学部の入試の季節になり、誰ひとりとして欠けることのないように教員はカゼを引かないようにと釘をさされ、大学院の入試も始まり、同僚の仕事が増えないようにお互いに仕事を引き受け、その間にも各種会議は継続的に開かれ、講義の資料を作成し論文の文献を探し、気がつけば2014年春季研究発表会の予稿集作成の時期に突入していました。

 一気に大学の学生さんと直接に関わる業務だけをざっくりと書きましたが、学会の準備について11月には翌年の大学行事が暦で作成されるので、それまでに日本独文学会の開催日程を事務方と打ち合わせをしなければなりませんでした。そして発表会場を押さえることが最重要の案件です。理事と同僚は連絡を取りながら、ふさわしい教室を選定し、学会参加者のみなさんの当日の動線を想像し、具体的な発表会場を教室に割り当てました。そして忘れてならないのは、託児所の確保でした。幸いキャンパス内には麗澤幼稚園があり、ご協力を得られるとの確約を頂戴してありました。結局は使用する必要はなく、同僚は麗澤幼稚園に大変に気を遣ったのですが、キャンセルしたことのダメージなど何もなく寛大な幼稚園に感謝しきりでした。

 発表者からの原稿と、目次や上記の会場の案内図なども理事に目を通していただいてからこちらに届き、予稿集の編集が具体的に始まりました。学会当日に発表会場が見やすいレイアウトを印刷業者さんと打ち合わせを重ね、原稿は校正を重ね、全体を通して理事にいただいた助言を反映させました。業者さんの対応の速さと正確さに感謝し続ける毎日でした。本学の雰囲気が伝わるような表紙の色を、ということで「明るいすみれ色」のエンボスとしました。幾度も理事には目を通していただき精度をあげ、5月の中旬に納品されました。業者さんとも息を合わせ、予稿集の作成は無事に終了しました。予稿集の作成を意識している1月から5月にかけての大学の仕事のスケジュールを見返すと、入試がいろいろな姿で現れ、修論審査は1日がかりで、会議が沢山、という日程でした。大学関係者のみなさまであれば、きっと同じような思いをしておられることでしょう。予稿集が納品されて、ほっとしながら研究棟から講義棟へ移動しているとき、遠くでウグイスが鳴くのが聞こえてきました。そうか、里山のウグイスは今の時期もさえずるのか、と思いながら、青々と広がる芝生の上を実に呑気そうに歩くカラスを横目に、講義へと早足に向かいました。
 
5月22日 木曜日
 教育研究支援グループの職員さんと打ち合わせをしました。学会前日および当日の施錠と開錠の時刻と担当者の確認作業、会計の確認作業、全体のスケジュールの確認作業です。参加団体に必要な長机とイスの確保はこのグループの管轄下にあります。約90分ほどの間に、いくつもの細かい事柄を決め、関係各位に連絡を入れました。入試課には当日に使用するであろう、マグネットや腕章、レーザーポインター、トランシーバーを借り受けることとしました。打ち合わせと関係各位に連絡をした後、学会から届いたベルに発表会場の割り当てをポストイットで貼り付けた後、大看板の準備に取り掛かりました。

 学生支援グループと教務グループと入試課さんの事務室前で、不器用そのものの4人(教務補佐さん2名を含む)が大看板を相手に悪戦苦闘していると、入試課さんの職員の方が、前述の貸し出しの物品をすでにカゴに入れ持って来てくださいました。実は4人で、重い看板を引きずり出し、これに貼るのか、と気弱になっていたところでした。物品を整然と入れたカゴを持って現れたこのベテランの面倒見の良い入試課の職員さんは、看板作りの道具一式も持っていて、「あ、これ、結構大変です。」とにこやかに言ってくださったのでした。後光が見えた気がしました。「お願い!教えて!…。あの、できれば一緒に作業してもらえないでしょうか?」とほぼゴリ押しに、「いいですよ。今、時間ありますから。」と快く協力してくださいました。女神さまに見えました。スチール製の結構な重さの板に、日本独文学会春季研究発表会とプリントした模造紙を皺がよらぬように張り5人がかりで伸ばしていると、女神は「これは裏側に折るとあとからビニールのカバーをするとき皺になります。えっと、ビニールかけますよね?」と念のため確認を取ってくださいます。「うん、雨や風に紙のままはちょっとよくないよね。」とほとんど感動しながら答えました。「ですよね。それなら、この余りの紙を切るんです。」と彼女は言いながら、カッターをすらりと出して「はい、余った紙のところ切りますから、テープで留めて行ってくださいね。」と指示してくださいました。彼女がカッターで切った後の紙を押さえながら4人は「貼りまーす。」「引っ張りまーす。」「貼りまーす。」「引っ張りまーす。」と作業をしました。紙を切り終えると、「じゃ、ビニールかけましょう。」と神々しく彼女は言い、ビニールを掛けた看板の上にのり、皺を伸ばしてくださいました。「貼りまーす。」「引っ張りまーす。」「貼りまーす。」「引っ張りまーす。」と作業をしました。「はい、できましたね。」とにこやかに職員の方は去って行かれました。「有り難うございました。」と4人の口には自然と言葉が湧き上がりました。綺麗に仕上がった看板を組み立て、残りの工具を入試課に返し研究棟にもどりました。先を歩く同僚と2名の教務補佐さんの足取りの重いことこの上なし、という体でした。

 看板と格闘している間に他の同僚たちが学生さんの協力を得ながら掲示物の確認や印刷したポスター類にパウチ加工をし、足りないポスターを作成しました。スマートなイメージのポスターは同僚の趣味の良さの賜物です。

5月23日 金曜日
 2時限から連続4コマの講義の最後のゼミを終えた午後6時過ぎに、エントランスへと向かいました。すでに同僚たちが発表会場の音響の確認作業を終えていました。学生たちが長机を並べています、が、打ち合わせのレイアウトと違っています。気の毒に、一からやり直しです。申し訳ないがすべて並び替えてもらいました。若いって素晴らしい!動きは機敏で気合が続くという驚きの状態を目の当たりにしました。参加団体の使用するイスを長机とともにセッティングしていくのですが、学生の誰をと指名をしたわけでもないのにいつの間にか役割分担ができあがっていきました。同僚が事前に用意したチェックリストでお互いに確認をとりあいながら作業を進めていきます。学生たちが黙々と動いてくれるので喉をつぶさずにすみました。「ここ、イス2つ!まるイスで!」丸いイスはパイプイスよりも幅があり、長机に3脚は入らないためイスの数によりイスの種類を変えていかなければなりません。「ここパイプイス3!」「ここはイス4!まるイス前後に2脚ずつ!」パイプイスを運ぶ学生さん、長机を移動する学生さん、まるイスを運ぶ学生さん、男子女子を問わず、テキパキテキパキと音が聞こえてくるようでした。エントランスホールで参加者を無理なくエレベーターへと誘導できるように、またその途中で名札に名前が書けるようにと、まるテーブルとまるイスを設置しました。いい感じになってきたなと思っているとエレベーターに向かって左手側で「あ…。」学生さんが長机を見ながら動きを止めています。「あ…穴。」長机に拳が余裕で入る穴が開いています。「それ、僕のところでいいです。」同僚が所属する団体が使用してくれるとの有り難いお申し出でした。学生たちにも大うけで、場が和んだ瞬間でした。疲れが溜まってくると普段では特段に面白くもおかしくもないことがなぜか笑えてしまうものです。エレベーターの位置と発表会場の各階の案内図を貼ってみると矢印も必要だということになりました。同僚が太いマジックで豪快に矢印を手書きで書き加えました。この時もなぜか爆笑してしまいました。疲れと笑いでエントランスが準備完了となりました。

 2階の本部にはすでに学会から届いた名札、会計ボックス、名簿、領収証などが移動してありました。机もロの字に並べられ、受付担当の学生たちが予行のスタンバイをしています。懇親会の領収証も出来上がっていました。そういえば教務補佐の方がペタン、ペタンと赤インクでスタンプを数日前に押して作ってくださっていました。受付の作法を同僚が台詞を準備してレクチャーした後、実際に「模範演技」をすることになりました。参加者の流れをできるだけ学生さんが具体的に想像できるようにとの思いからホワイトボードに受付のレイアウトを描きました。「要はお店で物を売るときのような感じで。」と説明する同僚とともに動いてみると台詞が微妙な雰囲気になり、このときも場が和み、学生さんたちは楽しんでくれているように見えました。重要事項は参加費を頂戴し、名簿で確認し領収証を発行すること、懇親会費を頂戴しその領収証の発行と領収済を示すシールを参加者の名札に貼っていただくことの2点であると再度注意しました。「では明日はみなさん頑張ってください。」と同僚が精一杯の元気な声で散会の挨拶をし、学生さんを帰宅させました。研究棟へ戻る途中、懇親会場の最終チェックを行いました。テーブルはシェフがオシャレに配置してくださっていました。一つの料理を3か所に置く、ワインは冷蔵庫の近くに、その並びにワイングラスを、スピーカーの位置は両サイドに、司会のマイクはフロアに、ステージは…どうしましょうか…。大きなステージが2台あり、それを使用するかどうか…。とりあえず、最後方の参加者からはどのように見えるのかをチェックしてみます。同僚とともに並び立って、もうひとりの同僚が懇親会場の最も後方まで歩いて行きます。その後ろ姿で、背中に「疲れました。」と書いていなくてもそれと歴然とわかります。彼は振り向き前方を見て「やっぱり、ステージ要るわ。」と言うと、即座にシェフと職員の方が折り畳んで収納されているステージを手際よく前方中央に設置してくださいました。「もう1台出しましょうか?」「有り難うございます。十分です。明日は…明日もお世話になります。どうぞよろしくお願いいたします。」「普段のランチも美味しいですから、来てくださいね。」「はい、有り難うございます。失礼します。」同僚と、司会と司会補佐の役割分担を決め、大学を出たのは午後9時前でした。

5月24日 土曜日
 本部から学生とともに5階の発表会場に行き、最終的な音響チェックをし、2名の学生の役割を説明します。1名は音響とPCの担当、1名はマイクを持って質問者に走る担当です。マイク担当の学生さんの注意事項として、司会者の言葉に合わせ行動すること、挙手した質問者のところへは腰をかがめて速やかに移動しマイクをオンにしてお渡しすること、質問者は続けて質問することも度々あるので、質問者が「有り難うございました。」と質問が明らかに終了するまで質問者の横でしゃがんでいること、質問が終了したら丁寧にマイクを受け取りオフにすること、次の行動に移れるように司会者の言葉をよく聞き、会場全体を見ておくこと、発表者の前を横切らなければならないときには特に身をかがめること、と指示を出しました。学生さんがフリーズ状態になっています。「はい、じゃやってみようか。」発表者が到着するまでに形にしておかなければならないし、叱って動けるようになるものでもないし、幾度か繰り返し説明し、幾度も動いて見せました。体力を残しておかなければ今日1日、まだ始まっていないのです。「大丈夫、参加者は大学の教員でみなさん慣れていますから。質問をする先生方も十分お分かりになっています。少し休んでおいてね。」と学生さんを落ち着かせました。

 1階のエントランスを見回ると、すでに参加者が手続きを行っていました。昨夕のキャワキャワと幼い表情ではしゃいでいた学生さんたちが見事に黒いスーツでみなさんをお迎えしています。「あの麗澤大学の…。」と受付で参加費と懇親会費を支払ってみました。学生さんたちは実に明るく楽しく元気よく頑張ってくれています。顔つきもピッカピカです。エントランスホールの人の流れも思い描いた通りで、中央のまるテーブルで談笑されている先生方もおいでになります。受付は学生さんを主役にし、奥で教務補佐の方が会計の管理をし、私はひっそり植木の横にまるイスを移動し腰かけました。トラブル発生時に備えてだったのですが、幸い何も起こらずに安心して発表会場へと戻ることができました。

 発表者のみなさんも会場入りし、司会の先生方に会場担当の学生さんを紹介しました。理事から「会場と発表者の貼り紙は両方の入り口にあった方がいいです。」とごもっともなご指摘を頂戴しました。ハンドアウトのある入り口だけにしか会場と発表者の貼り紙をしてありませんでした。時間がないのでまずは手書きで、と思ってもサインペンは1階の受付にあります。学生さんに「1階の受付からサインペンを急ぎで持って来て。走って!」と告げ、5階の立ち番の学生さんに貼り紙のない入り口に立ち、ハンドアウトはもう一方の入り口にある旨を口頭で参加者に伝えるように指示を出しました。5分が過ぎ、10分が過ぎ、サインペンを取りに行った学生さんは戻ってきません。まさか、迷子?途中で他の用事を足している?真面目な学生さんだからそのようなことはないはず…。エレベーターは建物の両サイドにあるのでどちらから戻ってくるのか分からないので、中央階段付近で待っていました。しばらくして、ようやく学生さんが戻ってきたようです。階段から彼女の頭の先らしきものが見え、ゆっくりと額らしきものが見え、ゆっくりと顔が見え、ゆらゆらと肩が見え始め、彼女は本当に「走って(5階から階段を下り、1階にたどり着きサインペンを借り受け、1階から5階まで階段を上り)戻って来た」のです。「次からは走って、と言ってもエレベーターを使ってくださいね。」とサインペンを受け取りながら休むようにねぎらいました。発表会場には参加者が集まり始めていましたので、邪魔にならないように貼り紙に手書きで会場名に発表者名を書き加えて行きました。壁の比較的高い位置に貼られた紙に発表者の氏名を書くと、乱れた漢字になり易いことを実感しました。さきほどの真面目な学生さんは回復しただろうか?血色が元々良好な学生さんではないけれど、さらに白い顔色になっていたけれど…。「少しは休めた?大丈夫?」学生さんはうなずくばかりです。「他の学生さんと交代する?」うなずきません。瞬きもしません。「マイク担当はできる?」うなずきます。

 「つらくなったら言ってね。」うなずきます。入り口のあたりで全体の様子を見ていると懐かしい方々が声をかけてくださいます。「お世話になります。」「お疲れ様です。」優しい言葉につい幾人目かの先生に弱音をぽろりと言ってしまいました。「何言ってるんですか。まだ始まってないですよ。」とその方は前回の担当校の方で優しく笑っています。担当校でありシンポジウムも大成功でした。仰る通りです。これからです。「水、水が要ります。」と隣の発表会場担当の同僚が来ました。そういえば水を用意してありません。同僚とともに1階の受付まで行き、教務補佐の方に水の手配をお願いしました。どこから出金するのか、それが問題でした。教務補佐の方も同僚も、金額的には自腹で構わないと口々に言い、とにかく発表会場に届けてもらうことになりました。急ぎ5階に戻り開始を待ちました。

 時刻となり、手慣れた司会者の先生方のご挨拶から研究発表会が開始しました。しばらく様子を見てから、2階の本部に戻り発表会場の貼り紙の件を伝え、新しい貼り紙を用意することを確認し、1階に降り受付をのぞきました。学生さんたちはまだ十分に元気に応対しています。5階に戻り発表会場に入るとPC担当の学生さんの具合が悪そうです。さきほどの学生さんを見るとマイクを持って壁際に立っています。2人にはできるだけ腰かけているようにと言ってあったのですが、とても真面目な彼らはそのようなことはできなかったようです。しばらく廊下で学生さんを休ませることにしました。ほんの数分で学生さんは本当に見違えるほど元気になりました。発表者の声量と質問者の声量のバランスが取り難いのが気になります。それでも学生さんはマイクを持って走り、PC担当者もそれなりに精一杯に頑張ってくれました。

 廊下の様子を見ると、隣の会場の担当である同僚が廊下の突きあたりにあるベンチにくずおれています。実際は姿勢を保ってダンディに腰かけているのですが、魂が抜けているように見えました。水については本部に伝えるとやはりその代金のことで若干の意見交換を要したとのことでした。しかし快適な発表会とするためには必要であるとの見解は変わらなかったようです。そういえば担当会場には水が届いていなかったことを思い出し、急ぎ1階へ行き、水の調達を今一度お願いしました。連絡がどこかで途絶えていたようでした。

 発表会場に戻るとほどなく水も届き、音響のバランスも取れ、会場の2か所の入り口には発表者と会場を記したプリントがすでに貼りだされてあり、何とか1日目を乗り切ることができました。学生さんたちをねぎらい1名には明日もお願いしたい旨を伝えました。懇親会については先ほどのくずおれていた同僚と2人で仕切ることになっているので若干の打ち合わせをしようかと思っているとその同僚がやってきました。「そちらは終わりましたか?」「何とか。」「こっちの会場の音響が何かおかしいんです。」「何が?ハウリング?」「いや、ハウリングというか、反響というか。」「とにかく聞き難いのね。」「原因が分からないので、ちょっと試したいんですが。」「やってみましょうか。」こちらの発表会場では、ある団体の先生方が打ち合わせをしておいででしたが、やむを得ずマイクのテストを繰り返させていただきました。原因は不明のまま、本部に音響の不具合を伝え、明日の発表会場を変更することになりました。

 懇親会でも学生さんたちが大活躍をしてくれました。自発的に手伝いを申し出て、生き生きと作業をこなしていました。司会担当の同僚とはアイコンタクトでスピーチの間合いを確かめ合い、ステージ上へ該当する先生方を誘導させていただきました。準備段階ですべての確認を終えていなければならなかったのですが、司会担当が前々日に決まるという具合でしたため、懇親会の段取りを決めるところから、ほぼ当日の懇親会の直前に行っている有様でした。お名前を間違えてはいけませんので、直接に確認をさせていただくという非礼を申し訳なく思いつつ、ヒヤヒヤしながらタイムキーピングをし、スピーチをお願いする先生方にフロアでお声をかけさせていただきました。そのような状況であったにもかかわらず、先生方には好意的にご協力いただきました上に、お気遣いのお言葉まで頂戴し、救われる思いがしました。合間では、懐かしい面々と歓談でき、共通言語を持っている人たちとの会話がこんなにも心地がいいのか、と再認識しました。「ここまで来たら、終わったも同然ですよ。」とはじける笑顔で元気付ける言葉を投げかけてくださった方もいらっしゃいました。本当に有り難かったです。発表会場の変更を理事の方に了承を得てから、同僚が挨拶の言葉とともに発表会場変更のインフォメーションをし、お開きとなりました。和やかな雰囲気の手作りの懇親会の夜は更けて行きました。

5月25日 日曜日
 本部に行く前に司会を担当する発表の要旨を研究室で読みました。予稿集を手に取ると、あっという間に1年が過ぎたことが実感されました。本部に寄り、担当の学生さんを確認し、発表会場に向かいました。今日はじめてマイク担当する学生さんに、その役割を説明しました。できるだけ腰かけて疲れないようにすることも忘れずに付け加えました。PC担当は昨日からの学生さんです。発表者と質問者の声量が違う場合にはできるだけこまめにマイクの音量を調節すること、プロジェクターの操作の確認作業などを行っているうちに発表者の関係者が到着しハンドアウトをまとめるなどし始めました。そういえば変更した会場には立ち番はいるだろうか、と不安を覚えました。確認するとやはりいません。5階から2階の本部へ走ると、本部の同僚は電話の応対の最中です。終わるのを待ち、立ち番の学生がいないことを告げ、本部にいた大学院生を連れて出ました。院生さんに顛末を説明し、当該の発表会場へ行きました。「ここに立っていて、口頭で来た先生に会場の変更を伝えればいいですか?」「そうだ、イス、イス。腰かけてて。疲れちゃうからね。」院生さんをイスに座らせ、先ほど同僚が電話で知らせを受けていた遅刻する発表者のいる会場へ行き、司会者の先生にその旨をお知らせしました。

 時刻になり、司会者としてご挨拶をし、発表が開始されました。一緒に主たる司会をしてくださる先生は、信頼できる先輩なので何らの心配もなく司会者席でフロアを見ていることができました。質問の時間になるとマイク担当の学生さんは一生懸命に役目を果たし、PC担当の学生さんも昨日よりもリラックスし余裕さえ感じられます。音響も昨日よりも良好なようです。最後の発表者になり、プロジェクターの出番です。司会者もフロアに移動しましたが、斜め左後方から何か感じるものがあり振り向くと、やはり信頼している先輩がジェスチャーで「ずらせば?」と伝えています。発表者を見ると、発表者がスクリーンの一部のようになっています。詳述はしませんが、すぐにその先生が何を伝えたかったのかが分かりました。主たる司会の先輩に伝えるとすぐに立ち上がって演壇をずらそうとするとPC担当の学生もすぐに反応して手伝おうとしました。しかし発表者がいち早く事態を把握しフロアで発表を継続してくださいました。イスを用意しようとしましたが、ご不要とのことでした。多くの質疑応答がなされ、時間いっぱいまで議論が続きました。主たる司会者の先輩と滞りなく終了したことに安堵し、発表者の方々に御礼を申し上げました。爽やかな笑顔を残し主たる司会の先生は帰って行かれました。参加者のみなさんもすーっと退室されていきます。学生さんたちはすでに後片付けを始めていました。学生さんは育てるのではなく育つものだと彼らの無駄のない動きを見て思い知らされました。

 本部に戻りながら、掲示物をはがし、マグネットを回収し、学生さんに指示を出し、参加者の先生方にねぎらいの言葉をいただいたり、ご挨拶を申し上げたり、と無事に終了したことで体も軽くなりつつありました。本部では回収された名札の仕分けや、借り受けた物品の数の確認作業を行っていると、同僚が「閉会の辞ちょっと見てきて。」と声がかかりました。会場へ急ぎ、担当の学生にここで閉会の辞が述べられること、その音響も担当してもらいたい旨を伝え、閉会の辞を担当する同僚を待ちました。何らかの都合で同僚ができない場合に備えスタンバイです。理事の方と雑談をしていると同僚が姿を見せ、一安心です。閉会の辞もトラブルなく終わり、学生をねぎらい本部に急ぎ戻って作業を続けていると、理事の方々が本部をねぎらいに来てくださいました。言葉はやはり大切です。文字化あるいは音声化すれば量的には多くはないかもしれません。それでも心情が余すところなく伝わってくる言葉がそこにはありました。月並みな表現かもしれませんが、担当校を引き受けた甲斐があった、と思えました。理事と入れ替わりに1階のエントランスホールを復元していた同僚が戻って来るなり「まだクロークが閉じられない。」と嘆いています。施錠の関係などから、クロークの場所を本部に移動することになりました。クローク担当の学生はお腹を空かせているに違いありません。お弁当を早めに食べ終わった学生さんに交代を依頼しますが、彼も「残業」の状態です。気の毒とは思いつつ、「ごめん。」と拝みました。クローク担当の学生さんが空腹そのものの顔つきで本部に戻って来ました。クローク移動の貼り紙を用意してからクロークへ行き、拝み倒した学生さんをふたたび拝んで荷物を本部に移動してもらいました。本部にもどると学生たちが名札の仕分けや借り受けた物品を整頓してくれています。あとはすべての貼り紙などをはがし、復元作業を完了すれば解散できるはずです。点検に行くことを申し出てくれた学生は、PC担当を2日連続でこなしてくれた学生さんでした。「えっとね、あのね…。」疲れが溜まると頭の中にある指示内容を言葉にするのに時間がかかるのです。「はい、各教室のマグネットと貼り紙をはずして、途中で階段や壁にある貼り紙もすべてはがしてくればいいんですね!」張りのある元気な声で学生さんはしっかりした口調でそう言ってくれます。「その通りでございます。どうぞよろしくお願いします。」と苦笑いしながら学生さんを本部から送り出し、同僚とともにエントランスホールへと向かいました。一部に荷物が置かれたままになっていました。すべてを撤収する時刻はすでに過ぎていました。仕方なくその荷物を他のテーブルに移動し、作業は終了しました。

 後日、物品の返却、使用した用具の発送、会計、御礼や連絡のメール、その他、学内への報告などの事柄がしばらく続き、1週間後の同僚との会話では「疲れ取れました?」「何か変です。」が繰り返されました。研究発表会の参加者は400名を超え、懇親会の参加者は200名を超えていました。

 この学会の手伝いをしてくれた学生さんたちは、その後、少し成長したように見えます。知らなかった世界があることを知ったためでしょうか。学生さんにとっては厳しく見える質疑応答が刺激になったのでしょうか。何かをやりきった思いをしたのでしょうか。この経験が彼らにとってプラスになればと願っています。

 このエッセイは私の視点で書きました。そのため、私の動きと同時進行していた事柄は書ききれていないことと思います。記録として書いた側面もあります。6月の初旬にすでに原稿のご依頼を受けており、7月末日の締切りという寛大なご対応に甘えさせていただきました。今はキャンパスではヒグラシが聞こえています。何らかの形で(文学/言語学/教育学など)ドイツ語に関わる研究者の集まりをサポートする学会運営は確かに体力を消耗します。しかし、それが研究者に良好な環境を提供することが目的であれば、報われる思いがします。そしてこの拙文も何らかの貢献ができれば幸甚に存じます。

 最後になりましたが、麗澤大学が日本独文学会に協力してくださったことに心から感謝を申し上げ、その内容を下記に示します。

(1)学会開催への麗澤大学からの補助金15万円
(2)教室使用料の発生は無し
(3)休日の事務職員の出勤
土曜日(午前中):1名
日曜日(終日):1名
(4)警備会社による施錠
土曜日:通常通りの警備体制
日曜日:学会側からの希望により校舎かえでの開錠時間を8時に変更


瀬川真由美(麗澤大学)
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