「ゲルマニスティネンの会」は元気です ―近年の活動報告―(H. Kitahara)[J]   作成日:2014/08/02
 「最近ゲルマニスティネンの会の存在感がなくなっているけれど、どうなっているの。若い会員が入らないという嘆きも聞いたけれど、会の現状について報告してもらえないかな。」
―日本独文学会の広報担当の先生がおっしゃったというこの言葉を伝え聞いたときに、私は天を仰いだ。学会会場の入口に陣取り、おしゃべりに興じているだけでは何の役にも立たないのだ。会費徴収の仕事をしているのは事実だが、研究で中身のあるアピールをしなければならないと痛感し、世話人の一人として猛省した次第である。しかし、たとえ外から見えにくくなってしまっていたとしても、活動の内実は、会員の努力と熱意の結果、現在もなお実り多く豊かである。そこで最近の会の動向と活動をこの場を借りてご紹介させていただきたい。
 
 現在の会員数はおよそ120名であり、多少の増減はあるが、ここ数年の規模は安定している。10年近く前は、たしかに世代交代が進まなかったこともあるようだった。しかし、現会長(会の正式名称では「世話人・庶務」)奈倉洋子体制が2008年に発足して以来、総会などの場で世話人と多数の会員が活発に意見を交換し、活動を刷新している。奈倉先生はその強力なリーダーシップの下、若い世代にも責任ある仕事をどんどんまかせて下さる。「あなた、やりなさい」とお声をかけていただくと、やらざるをえなくなるのだが、そこがこの会の長所であり、風通しの良さにもつながっているように思える。私が世話人になったのは33歳の時で、この世界では若手扱いされる年齢だったが、若手も中堅も大先輩も肩を並べて和気あいあいと活動している雰囲気のために、違和感なく受け入れられたのだと思う。現在では世話人5名中、いわゆるアラフォー世代が過半数を占め、ホームページ(URL: http://www1.m.jcnnet.jp/germanistinnen/ )の開設やメーリングリストの活用など、会員相互の交流と研究を活発化させるために、いろいろな努力をおこなっている。
 
 新しい活動だけではなく、ゲルマニスティネンの会には長く続けられている大切な活動がある。それは関東・東海・関西各支部で行なわれている研究会および読書会である。関東支部は夏期・冬期の年2回の研究会を開催し、読書会は2カ月に1回以上のペースで行なわれている。東海支部の活動は年3回の読書会が中心である。関西支部の活動は年1回の研究会のみであるが、その分一点集中で充実させられるよう、支部の世話人は骨を折っている。このように支部活動も活発に行われているが、各支部に参加することが容易でない会員も多数いる。そのためにこれまで活用されてきたのが会報誌「フラッシェンポスト」である。現在は私が恐れ多くも編集長の重責を承っているので、細かくご紹介させていただきたい。年1回発行で、2014年5月に35号を迎えたこの冊子は、いろいろな内容が盛りだくさんである。総会議事録や各支部の活動記録もこの会報誌で全国の会員に共有されている。巻頭は論文・研究ノートである。それぞれの記事の規模は、論文で原稿用紙20枚程度、研究ノートで10枚程度と短めではあるが(枚数を拡大しようという議論が総会で行なわれたこともあり、この問題は現在も検討中である)、若手からベテランまで、会員各氏の研究発表の場として活用されている。会員の出版した書籍を評論する「Bücher/Bücher」というコーナーでは、該当書籍の表紙写真も掲載されており、充実した内容ともどもレイアウトにはご好評いただいている。その他にこの冊子で特にご紹介したいのは、「会員の仕事」というコーナーである。ここには、全国の会員に自己申告で募った過去18カ月の研究業績が一覧表になって掲載されている。まさに、会員の活躍の証であり、努力の結晶ともいえる。誰がどんなテーマで論文を発表したのか、どこの研究会で何について口頭発表しているのかなどが一目瞭然である。「この人も会員だったのか!」と、活躍する人の名を見つけて嬉しくなったり、励まされたり、自分も頑張らなくてはと鼓舞されたり、いろいろな読まれ方がなされていることであろう。

 「フラッシェンポスト」に掲載された研究発表や読書会の記録、論文、随筆などで扱われたテーマを見ると、教授法、言語学から文学まで、ゲルマニスティクの対象分野すべてを網羅するのみならず、ドイツの老人ホームを実際に訪問し、フィールドワークをおこなった成果を報告した例にみられるように社会学にもおよび、多岐にわたっている。その中でも頻繁に行なわれているのは、現代の作家・思想家研究である。ハンナ・アーレントの名前は、読書会・研究会の記録やその他の記事で頻繁に挙げられている。現代作家ではフォルカー・ブラウン、マルティン・ヴァルザーといった大御所とならんで、ヘルタ・ミュラーやメミネ・セフギ・エツダマーなど、トランスカルチュラルな背景をもつ女性作家についても毎号必ずどこかにその名前が印刷されている。ベルンハルト・シュリンク、カレン・デューヴェ、ユリア・フランクなどの旬な作家については、研究会のテーマとなるだけでなく、翻訳出版の報告も掲載されている。女性が読む女性の文学というスタンスへの関心が高く、たとえ18世紀のいわゆる「ゲーテ・シラー」研究のような場合においても、そのようなフェミニズム的な傾向が見出されることは、基本的に本会の特徴の一つと言えるだろう。

 そもそも、女性ばかりが集まって団結している時点で、フェニミズム運動の一環と切り離して考えることはできない。1980年に設立された当初は、魔女の会と揶揄され恐れられたということは、当時を述懐する諸先輩方の口や筆から漏れ聞こえてくるものである。それから30年を経た現在では、彼女たちのたゆまぬ努力と勇気ある意志表示の結果、政府が「働く女性の支援を」と形式的にでも口にするようになるほど、女性が活動できる場は広がり、受け入れられつつある。それだけに、現在は逆に、どうして今さら女だけで団結する必要があるのか、という疑問が、男性からだけでなく、女性からも呈されることがある。女性の活動の場が広がったとはいえ、残念ながら女性にたいする差別が完全に消えたわけではない。例えば私自身が日頃痛切に感じるのは、既婚女性にたいする差別である。何かの催しに体調や他の都合で欠席した際に、「あの人は結婚しているから、夜はご飯を作らなくちゃいけないので来られない」と根も葉もない噂をされたりする。離婚が間近いという噂を流されたこともある。男性は既婚でも未婚でも何の問題もないのに、女性であるというだけで周囲の勝手な思い込みに晒されなくてはならず、その理不尽さに嘆息するばかりである。私のようにこの状況を逆手にとり楽しめる人間には構わないのかもしれないが、結婚によって仕事上での評価を下げられるのではないかと心中ひそかに怯えている女性たちはきっといるはずである。とはいえ、ゲルマニスティネンの会としては、特に女性差別反対という運動をしているわけではない。とにかく既婚でも独身でも、子育て中でも介護中でも、常勤であろうと、非常勤であろうと、院生でも、定年退職しようと、研究にたいする熱意と愛情でもって結ばれ、活動している会、それがわれらがゲルマニスティネンの会である。女性同士一緒にいるというだけで、わいわいがやがや楽しく過ごし、一人ひとりが抱える問題に立ち向かう新たなエネルギーを獲得する場、そんな感じである。

 2010年千葉大学にて開催された秋季研究発表会でのシンポジウム「ドイツ語圏文化の現在―ベルリンの壁崩壊・東欧革命後20年の変化を読む―」は、実はゲルマニスティネンの会30周年記念企画の一環であり、会員アンケートを基にテーマを練り上げたものであった。発表者5名も全員会員である。会の名前をアピールしなかったのは、諸事情を考慮しつつ、団体の宣伝よりも、研究の充実度を重視した結果である。外から活動の実態が見えにくい、と指摘されたわれらがゲルマニスティネンの会ではあるが、なんと自分たちから名前を伏せていたのである。これからはひょっとして、そのような企画がさらに増えるかもしれない。そこはなお未知数であり、何とも申し上げられない。だが大切なことは、会員の直接・間接を問わない相互交流と、個々の研究活動を活発化させるための場と契機を提供することだと心得ている。そのためにあえて黒子に徹し、必要とあらば秘密結社と化してしまうことも厭わない。今後とも女武者アマツォーネの会ならぬゲルマニスティネンの会に、今後とも叱咤激励賜りますようお願い申し上げる次第である。
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北原寛子(小樽商科大学客員研究員)
ゲルマニスティネンの会世話人、機関誌編集・宣伝担当 
日付
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内容
2015/09/01
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