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KGDaF第5回国際シンポジウムに参加して (M. Niikura)[J]

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国際学会関連報告
  投稿日: 2014-7-1 12:43
新倉真矢子 (上智大学)
2014年4月25日、26日の2日間、韓国ドイツ語教育学会(Koreanische Gesellschaft für Deutsch als Fremdsprache、以下KGDaF)主催、韓国ゲーテ・インスティテュート共催による「第5回国際シンポジウム」が韓国ソウル市Sookmyung Women’s Universityで開催された。シンポジウムのテーマは、„Testen und Bewerten im Deutschunterricht – Theoretische Grundlagen und praktische Anwendungen”であった。招待講師にSprachlehrforschung, Testologieを専門とするProf. Dr. Rüdiger Grotjahn教授(Bochum大学)が招かれ、基調講演2件、ワークショップ1件、さらに韓国ゲーテ・インスティテュートの教員や韓国の大学教員による口頭発表11件が行われた。会場には2日間で延べ60人ほどが参加し、活発な質疑応答や意見交換が行われた。
シンポジウムに先立ち、主催者代表が挨拶し、「学習者の外国語能力や言語技能の適切な測定・評価については、韓国でまだ十分に議論されていない」ことがシンポジウム開催のきっかけであり、その背景には韓国における教育課程の改革以降、英語重視の政策が韓国教育学会に及び、第二外国語が選択必修となったためにドイツ語の開講科目数やドイツ語履修者の大幅な減少が現実となっていること、今後もさらに減少が見込まれることから、大学におけるドイツ語教育をこれまで以上に充実させ、同時に学習成果を厳密に測定することが今後の韓国のドイツ語教育学会に必要であるとの認識にあった。

Grotjahn教授は最初の基調講演で、テストの種類(診断テスト、習熟度テスト、進度テストなど)やテストの得点配分、テスト実施後のフィードバックなどについて解説し、学習指導の過程で評価する「形成的評価」と学習指導終了後に行う「総括的評価」の区別、学習の達成度評価(assessment of learning)、学習指導方法の評価(assessment for learning)、学習としての評価(assessment as learning)、「構成概念妥当性」などについて触れた後、言語テストの品質基準には特にCambridge English Language Assessmentが構想した“VRIPQ(=Validity, Reliability, Impact, Practicality, Quality management)”が有用であると説明した。また具体的な試験問題を示し、例えばペアの口頭試験では相手の言語能力により評価に差がつくことや、サッカーの解説もしくは料理のレシピに関する問題は男女に差がでる可能性があるため公平性に欠けるといった指摘があった。

2番目の基調講演は、「C-Test」についてであった。C-TestはGrotjahn教授が特に取り組んでいる分野の一つであり、言語テストの中でも言語能力を測るうえで最も研究された分野であるといえる(http://www.c-test.de)。 一般的なC-Testでは60-80語からなるテキスト3種-8種を用い、1語おきに語の後半部分を空所にする。学習者に空所補充させることにより文法や語彙、語用などの外国語能力が測られる。C-Testは多くの言語に取り入れられ、TestDaFのインターネット版ドイツ語プレースメントテスト(onDaF)にも使われている。現在では削除部分に様々なヴァリエーションがある(3分の2削除、前半削除、3語ごとの削除など)。

一般の口頭発表では、韓国ゲーテ・インスティテュートから3人がゲーテ・インスティテュートA2, B1検定試験とその評価、テスト問題や授業の到達度について発表した。他の一般発表では、授業の実践報告や通訳における言語切り替えの自動化、チューター制度の問題など幅広いテーマが扱われた。韓国の学生と中国の学生のテレビ会話の実践報告では、会話を続けるためのストラテジーについて興味ある報告があった。

私は今回KGDaFから日本独文学会への招待を受ける形でゲスト参加し、「ドイツ語技能検定試験(「独検」)」について口頭発表を行った。幸いにも発表後に「韓国ドイツ語教育学会」の機関誌への掲載依頼があり、発表内容が近々同誌に掲載される予定である。韓国のドイツ語検定試験は、ゲーテ・インスティテュートやTestDaFしかなく、日本の「独検」のような独自の検定試験はない。招待講師の立場を重視してもらったせいもあるかと思われるが、「独検」は日本のドイツ語教育現場に即した検定試験として大きな関心とともに好意的に受け止められた。

ここで「独検」の歴史を振り返ると、1992年に設立、当初4つの級(1級~4級)が2008年度より6級(1級・準1級・2級~5級)に増設された。「独検」は設立当初より日本の高等教育機関とつながりが深く、また現在でも出題委員はじめ実行委員は大学教員であり、試験会場も全国の大学(2013年度合計67校)の教室を使用している。各級の検定基準は、大学の授業内容と授業時間数を考慮に入れて作成されている。5級増設時には大学がセメスター制を導入し始めた時期と重なり、試験内容も設立時に主流であった「文法・訳読」のカリキュラムから「総合ドイツ語」や「ドイツ語コミュニケーション」など多様な方向へシフトしていることから、大学で半年間総合的なドイツ語教育を受けた学生を念頭に置かれている。

また、これまでの受験者延べ人数は31万人に達し、受験者の年齢は5歳から90歳まで(2013年度)と、大学生の受験者が最も多い中、幅広い年齢層の受験者を確保している。受験目的は、例えばドイツ語圏滞在の実力を測る、独学の成果を確認する、生涯教育の一環として合格を目指すなど身近にドイツ語能力を測る資格試験としての役割も果たしている。「独検」は日本におけるドイツ語教育に根付いており、GER(=Gemeinsamer Europäischer Referenzrahmen, 英語CEFR)を参考にしているものの必ずしも準拠していない。グローバル・スタンダードとなりつつあるGERは、コミュニケーション・行動準拠(kommunikativ-handlungsorientiert)のアプローチのもと、ヨーロッパの言語教育に対しての長い歴史と経験がもとになっている(Morrow, 2004)。GERをドイツ語に適用するために作成されたProfile deutsch (Langenscheidt)は、しかしながら語彙面でかなり問題があることがGrotjahn教授からも指摘された。Grotjahn教授によればGERは一つの検定基準に過ぎず、CambridgeやALTEその他複数の基準があるとのこと。GERに完全準拠しているゲーテ・インスティテュートの検定試験は、日本では留学やドイツ語圏での滞在、現地での就職を目指している人が受ける傾向にあるが、日本のドイツ語教育を受けた学生は「独検」を受験する傾向にあり、両方の検定を受ける人を含め、その人の目的やそれまで受けた教育による受験の住み分けができているように思われる。

最後にシンポジウムに参加した感想を述べさせてもらえば、招待講師の講演内容はもちろんのこと、ゲーテ・インスティテュートや大学関係者の発表内容はとても興味深いものだった。発表者および会場の参加者のドイツ語能力の高さは目をみはるものがあり、また主催者による2日間のもてなしはとても心暖まるものだった。今回初めての韓国訪問だったためか日本と異なることよりも似たものを目にすることの方が多く、またドイツ語を取り巻く状況は日本と類似し、まさに「近くて近い国」であった。そのようなこともあり、主催者とは今後も連絡を取り合うことを約束して帰国した。


新倉真矢子 (上智大学)

Cambridge English Language Assessment (2013): Principles of Good Practice: Quality Management and Validation in Language Assessment. Cambridge: Cambridge English Language Assessment. [http://www.cambridgeenglish.org/research-and-validation/quality-and-accountability/]
Glaboniat, M., Müller, M., Schmitz, H., Rusch, P., Wetenschlag, L. (2002): Profile deutsch, A1-C2. Version 2.0. Langenscheidt
Grotjahn, R. (2009): Testen im Fremdsprachenunterricht: Aspekte der Qualitätsentwicklung. In: Praxis Fremdsprachenunterricht Ⅰ, 4-8.
Grotjahn, R. / Kleppin, K. (2014): Prüfen, Testen, Evaluieren. München: Klett-Langenscheidt. [=Deutsch Lehren Lernen (DLL), Band 7; erscheint Herbst 2014].
Grotjahn、R. (2014): The C-Test bibliography: version January 2014. In R.Grotjahn (Hrsg.), Der C-Test: Aktuelle Tendenzen/ The C-Test: Current trends. Frankfurt am Main: Lang, 323-365.
Morrow, K. (Ed.). (2004): Insights from the Common European Framework. Oxford, England: Oxford University Press.
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