第5回教授法ゼミナールのテーマについて(お知らせ)   参照数:5390

第5回教授法ゼミ開催

ドイツ語教授法ゼミナールは,1992年以来,LerntheorieCurriculumforschungLeistungsfeststellungPädagogische Interaktion を中心に議論を重ねてきた.第5回ドイツ語教授法ゼミナールは「ドイツ語教育における異文化間学習(Interkulturelles Lernen)」というテーマで開催される.

今回の招待講師Prof. Dr. Bernd-Dietrich Müller-Jacquierは,Erziehungswissenschaft, Sprachlehrforschung, Romanisitik, Germanistik, angewandte Linguistikなどを修め,70年代後半から理論と教育実践の両面で,interkulturellな指向を持つ外国語教育の確立に関わっている.なかでも彼が中心的な役割を果たしたプロジェクト"Sprachsensibiliserung im interkulturellen Fremdsprachenunterricht"プロジェクト(1976-1977)からドイツ語教科書"Sichtwechsel"が生まれている.彼は他に"interkulturelle Wirtschaftskommunikation"プロジェクト(1989)を行っている.Prof. Müller-Jacquier1995年,Cheminitz工科大学のWeiterbildung und Interkulturelle Kooperation講座の開設に参画し,現在 interkulturelle Kommunikationの教授.代表的な著書として次のものが挙げられる。Konfrontative Semantik (共著,1981), Anders lernen im Fremdsprachenunterricht (1989), Wortschatzarbeit und Bedeutungsvermittlung(1994)Interkulturelle Wirtschaftskommunikation (1993)

Konfrontative Semantik : 一般に外国語の学習では,母語と対象言語との間の,言語的対応関係が学習の出発点となり,外国語の概念(Begriff)を母語の概念に置き換えることで,その概念の意味を理解したと考えやすい.しかし,異言語が遭遇する状況で誤解のもととなったり理解の問題を生みだすのは,むしろ諸概念の間の独自の相関関係や,社会的慣習や生活実践を背景とした意味の相違であることが多い.この種の意味を獲得する上では,従来的の言語学的な意味知識のみならず,それぞれの文化に固有の社会的諸要因に結びついた意味のシステムと取り組むことが求められる.したがって外国語学習は必然的に,その言語が使用される社会に固有なパースペクティブを取り入れるためのストラテジーの獲得という側面を持つことになる.konfrontative Semantikはこのような意味獲得理論の構築を目指す意欲的な試みであり,外国語教育にとってきわめて示唆に富んだものである.Müller-Jacquierは外国語授業におけるkonfrontative Semantikの実践領域として語彙の媒介を提唱し、意味獲得を目標とする模索的発問(Suchfrage)の学習ストラテジー開発や目的言語社会での意味探索活動(フィールドワーク)なども提案している。

 

Interkulturelles Lernen im Deutschunterricht.
Was ist das?

世界規模の国際化により各国間の相互依存が急速に進み,異文化間の接触や交渉が日常化する中で、"intercultural"という用語は現代社会における教育を考える上でキーワードの一つとなっている.またヨーロッパ域内では,多言語主義を前提とした相互理解・共生の要請から,異文化間教育は学校教育の重要な柱の一つであり、とりわけ外国語教育には異文化理解への中心的な貢献が期待されている.日本でも"intercultural"な問題意識を背景とした外国語教授法の取り組みが英語教育を中心に80年代に始められているが、理論・実践の両面において残されている課題はきわめて多いといえる.外国語の授業は本来,目的言語を語り行動する人間と学習者が直接・間接に遭遇する場である。ドイツ語授業もまたこの意味において,異文化間の接触・交渉という次元と無関係ではあり得ない.また外国語の学習が,どのような場合も、母語世界での社会化・文化化の過程を経て獲得された自国文化との関係において行われるていることを考えると,ドイツ語によって媒介される異文化的要因と学習者の母語文化がどのような関係において取り扱われるべきかという問題は,常に教授法の中心的な課題の一つであると思われる.第二外国語としてのドイツ語教育の枠においても、複数の言語を学習することによる複眼的思考の養成や、言語・文化へのセンシティヴィティの促進という、外国語教育に内在する古くて新しい異文化理解教育への可能性を、いくつかの観点から改めて検討することも重要なテーマとなろう。ドイツ語教授法ゼミナールでのこのような問題領域に関する議論と授業実践の展開によって,日本におけるドイツ語授業に新しい局面が切り開かれることが期待される.

他方interkulturellな外国語学習・教授という構想は、その出発点においてきわめて学際的かつ多面的であり、このことがこの構想の曖昧さを助長していることも否定できない。interkulturelles Lernenの観点では、外国語授業にどのような学習目標が設定されうるか、またそのためにはどのような授業の枠組みが有効かが具体的に検討される必要があろう。また日本のドイツ語授業がおかれている学習・教授の前提条件において、interkulturelles Lernenがいかなる意味を持ちうるか、という点についても活発な議論が望まれる。

招待講師のホームページ:

http://www.tu-chemnitz.de/phil/ikk/personal/mj/index.html

http://www.tu-chemnitz.de/phil/ikk/lehrver/archiv/archivframe.html

 


第5回ドイツ語教授法ゼミナール
テーマ:Interkulturelles Lernen im Deutschunterricht
招待講師:Prof.Dr.B.-D.
Müller-Jacquier(TU.Chemnitz)
期間: 2000年3月27日(月)-31日(金)
場所:オリンピック記念青少年総合センター
参加費: 3万円
申込締切: 1999年7月15日
参加申込先:〒113-8622 東京都文京区本郷 5-30-21
郁文堂気付 [はがきで申込;氏名(ローマ字併記),住所,電話(ファックス番号),所属と現職など記載]